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子宮がんとワクチン

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 子宮がんは、子宮口の付近にできる頸部がんと、子宮内膜にできる体部がんに分けられる。

 頸部がんは比較的若い女性でもなりやすい。途上国で増えているほか、危険性の高い層が若年化していると指摘されている。

 リスク要因は1980年代から、性行為によるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染であると言われてきた。がんに関連するタイプのHPVの感染率は非常に高く、実際にがんになるのはそのごく一部に過ぎない。自覚症状に乏しく、がん検診による早期発見の他に決定的な予防策がなかった。

 子宮頸がんの発生は、世界中で毎年47万人と見積もられている。また、子宮頸がんが原因で亡くなる人は毎年23万人。ウイルス感染による子宮がんの科学根拠(エビデンス)は、国際的な大規模プロジェクトで明らかにされた。

 数多く存在するHPVの型の中で、16型と18型が世界中から集められた子宮頸がん細胞の7割から検出された。そこで、主にその2つの型に絞ってワクチンの開発が精力的に進められ、いくつかの臨床試験の結果、高い感染予防効果が発表され、欧米では実用化されている。欧米では、11〜12歳の女児全員にワクチンを接種するという予防戦略が提唱されている。

 ワクチンによる子宮がん予防には、さまざまな困難が予想される。まず、すでに感染しているかなり多くの女性への効果は期待できない。次に、感染予防の長期的な効果が不明だ。がん発生率の低下も直接確認されていない。幅広い女性、あるいは男性に接種した場合のデメリットは不明である。ワクチンで予防できないタイプやがん検診への影響も指摘されている。

 子宮頸がんは多いが、経済状況から、ワクチンを全員には使えない国がある。それでも、ワクチンが開発されたことによる、希望に向けた困難であることには違いない。

 日本では、医療政策としてのワクチン導入には時間がかかりそうで、検診による早期発見に頼らざるをえない。検診は、綿棒で細胞を取って顕微鏡で調べる方法。婦人科で内診を受ける必要があるが、有効性は高い。自治体検診などで受けられるが、受診率は2割に満たないという。

 結婚あるいは性行為を開始した時点から、かかりつけの婦人科医を持ち、定期的に子宮がん検診を受けるのが望ましい。また、子宮がんのリスクが、喫煙で確実に高くなることも忘れてはならない。(国立がんセンター がん予防・検診研究センター 津金昌一郎)

(2007/08/23)

 

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