肝炎ウイルスの感染が続くと、一部は肝がんに進展する。日本では、それ以外が原因の肝がんは非常に少ない。
C型肝炎ウイルスは、1989年に米国で突き止められた。世界で感染が持続している人の数は1億7000万人。日本では150万人以上と推定される。第二次世界大戦時に拡散し、その後、輸血や血液製剤の使用などで広がり、感染が続く人が増えたと考えられている。
現在では、医療行為で肝炎ウイルスに感染することは例外的。C型肝炎ウイルスにはワクチンがなく、成人で感染しても持続する場合があり、注射の回し打ちや、医療現場での針刺し事故などが、新たな感染のルートだ。
世界中に最も広がっているのがB型肝炎ウイルスで、感染が持続している人は3億5000万人、日本でも100万人以上と推定される。B型肝炎ウイルスは子供のころまでに感染すると、何十年もほとんど自覚症状が出ずに持続することがある。
日本では、子供時代の主な感染ルートとして、出産時の産道での感染が残っていたが、ワクチンなどで予防措置が取られ、新たに感染が持続する人はほとんどいなくなった。
しかし、最近では、成人で感染しても持続する外来のウイルス株が、性行為による感染で日本に持ち込まれ、問題になっている。
日本には肝炎ウイルスの感染が持続している人が多いが、ほとんどは自覚症状に乏しい。まず検査を受け、持続的に感染していないか確め、感染者は適切な治療や定期検査を受ける必要がある。
肝がんの発生率に影響する生活習慣として、喫煙と飲酒が挙げられる。筆者は日本の疫学研究の結果をまとめ、生活習慣のがんへの影響を評価する研究班の主任研究者を務めている。飲酒は確実に、喫煙もおそらく確実に、肝がんのリスクを高くするという結論を得た。どのくらい高くなるかは、ウイルスの感染状況などを考慮して推定する必要があるため、今後の課題である。
また、コーヒーをよく飲む人で、肝がんの発生率が低いのも、ほぼ確実とした。最近、同様の研究結果が、国内外で報告されている。
今後、ウイルス感染状況などもあわせて検討し、感染が持続する人の中でも、どのような生活習慣で肝がんリスクが抑えられるかを突き止めたいと考えている。
(国立がんセンター がん予防・検診研究センター 津金昌一郎)
(2007/08/30)