得ダネ情報 住まい 転職 為替
powered by goo

文字の大きさ:

 
 
 

 

icon

得ダネ情報

 
 
ゆうゆうLife
 

食べ物と健康の関係

 食べ物と健康との関係には関心が高く、一つの研究成果に一喜一憂する傾向があるが、情報の吟味に特段の注意を払う必要がある。

 われわれの研究成果からは最近、コーヒーを1日3杯以上飲む女性は、大腸の主要部分である結腸がんになるリスクが、ほとんど飲まない女性の約半分だったという結果が紹介された。

 この報道に接した多くの人の頭には「コーヒーを飲むと大腸がんのリスクが下がる」とインプットされるが、もちろん実際にはそう単純な話で済むわけがない。

 確かに、この結果は、10万人の男女について、コーヒーの飲用習慣などを調査した後に約10年間追跡し、1200人に発生した大腸がんとの関連を検討したデータから得られた事実である。しかしながら、一つの限られた研究からのデータに過ぎない。

 真実か否かの解明には、まず同様の研究があるのか、同じ結果なのかを確認する必要がある。コーヒーと大腸がんについては、リスクが下がるという研究もあれば、そうでないという研究もある。

 次に、大腸がん予防のためにコーヒーが有効であることを証明するには、その関係が実は別の要因によるものでないことを確認しなければならない。例えば、コーヒー飲用者にある共通の特性が、大腸がん発生率の低さと結びついているのかもしれない。

 現実には、パーフェクトにデータがそろっていることはほとんどなく、コーヒーによる大腸がん予防は、現時点では、確実というより「可能性あり」の段階だと考える。

 さらに、コーヒーの他の病気への影響についても、知っておく必要がある。コーヒーは、肝機能障害、肝臓がん、糖尿病のリスクを下げるという研究がある一方、ぼうこうがん、消化性潰瘍(かいよう)、高血圧、高脂血症などのリスクを上げるという研究もある。

 研究者、メディア、生産・販売者などには、正確で偏りのない情報を伝える努力が求められる。一方、情報の受け手である国民・消費者も、信頼性を見極め、コストと期待できる見返りなどとのバランスに基づいて、冷静に対処する必要がある。

 メディアで流れる個々の研究の成果は、面白そう、ニュースになる、などの観点で選別され強調されることが多いので、ひとつの話題として受け止めるべきである。

(国立がんセンター かん予防・検診研究センター 津金昌一郎)

(2007/09/06)

 

論説

 

 
 
Copyright © 2007 SANKEI DIGITAL INC. All rights reserved.