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病気の予防とは?

 近ごろ、病院が予防医療センターを新設したり、検診施設が予防医療センターに名称を変更したり、「予防」という言葉がはやっている。PET(陽電子放射断層撮影)やCT(コンピューター断層撮影)など、最新機器を備え、がんなどを早期発見し、メタボリックシンドロームや老化といった病気予備軍(群)を診断することが主流のようだ。

 だが、健康に暮らしている人への医療的な介入や保健指導として行われる生活習慣への干渉は慎重であるべきだ。予防の本質は、健康な人の病気の発生を防ぐことで、検診による早期発見は予防ではない。検診を受けた人が、受けなかった人より余命が延びる確かな証拠がなければ、検診のメリットはない。また、病気の早期発見が例外なく幸せかというと、そうでない場合も少なくない。

 例えば、高精度のCT検査による肺がん検診、血液のPSA検査による前立腺がん検診で見つかるような異常の中には、発見されなかったとしても、死に至らしめず、墓場まで持って行ったり、自然に治ったりするケースも知られている。検診によって、死亡率が低くなる確かな証拠も現時点で示されていない。そのようながんの発見は、必要のない検査や治療で心身や経済に負担をかけるだけの可能性もある。

 病気予備軍に、生活指導や薬物療法で病気の発生を防ぐことは、予防の一つのあり方だろう。しかし、こうした介入が、他の病気のリスクを上げず、病気の発生やそれによる死亡を防ぐ確かな証拠があることが前提だ。

 メタボリックシンドロームに対する生活指導も、好きな物を食べられなくなったり、苦しいことをするからには、結果として脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞のリスクや医療費が減るだけでなく、健康寿命が延びる確かな証拠が求められる。

 アンチエイジングという言葉も、「予防医療」と称する現場でしばしば目にする。医学的な診断に基づいて、サプリメントなどが処方される場合もあるようだが、老化予防に有効とされてきたビタミンEも、高用量を服用すると死亡のリスクが少し高いという結果が出ている。

 健康ならば、よく分からないことに惑わされず、好きな物を食べ、好きなことをして、人生を楽しむのが基本である。しかし、禁煙・節酒・節塩などは科学的証拠がそろっている。こうした予防法はぜひ、実践してほしい。(国立がんセンター がん予防・検診研究センター 津金昌一郎)

(2007/09/27)

 

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