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有料老人ホームの探し方(中)

 ■“天国”探さず、現実見て 資金と生活の条件絞る

 終(つい)の住み家として期待が高まる有料老人ホーム。介護保険の創設をきっかけに、介護専用型の低価格タイプが急増する一方、豪華な設備をもつ高級ホームが羨望(せんぼう)の的。ホームに何を求めるかは人によって違い、どこが「良いホーム」かは一概には言えません。今回のテーマは、数多くのホームの中から、どうやって候補を絞り込むかです。(寺田理恵)

 「どこかに天国があるんじゃないかと思って、ホームを渡り歩く人がいます。でも生きている間に天国なんて、ない。譲れない条件を詰めて、我慢すべき所は我慢するしかない」

 シニア事情に詳しい和田好子・投稿誌「わいふ」副編集長(76)は言い切る。いったん入居したホームが気に入らず、入退去を繰り返すケースを、和田さんは「天国探し」と呼ぶ。

 和田さんが所属する編集プロダクションでは、20年前から高齢者住宅に関する書籍の編集を手がけてきた関係で週2回、電話による入居相談を受けている。相談内容はたいてい漠然としていて、資金の額を言いたがらない傾向がある。

 本当に入る意思があるのか、はっきりしない女性もいる。よくよく聞くと、「夫だけ入れたい」「自分だけ入りたい」と言い出すケースが珍しくない。「実は夫婦別れがしたいだけ。夫の世話に疲れて、くたびれている高齢の主婦は多い」という。

 和田さんは「ホームのリストを見ればすぐ選べるというほど簡単なものではない。『いい所がないか』と聞く人が多いけれど、まずはお金と生活の条件を詰めること」と指摘する。またホーム選びが難しい原因の一つとして、厚生労働省の分類のしかたを挙げる。

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 有料老人ホームは、厚生労働省の設置運営標準指導指針にもとづき、(1)介護付き(2)住宅型(3)健康型−に分類される。ほとんどは(1)の「介護付き」で、介護保険の指定をうけて介護サービスを提供する。

 しかし「介護付き」の中には、入居時に介護の必要な人が対象の「介護専用型」も、身の回りのことができる人が入居する「自立型」もある。「介護専用型」は平成12年に介護保険が創設されて以来、特別養護老人ホーム待機者の受け皿などとして急増した。

 一方、「自立型」は早めの住み替えに適したタイプ。入居者がコミュニティーを形成し、もっぱら生活を楽しむ所だが、介護が必要になった人も介護保険のサービスを受けながら住み続けられる。そのため「混合型」とも呼ばれる。この違いを理解しなければ、絞り込みが難しい。

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 入居相談を会員制で行っている「タムラプランニング&オペレーティング」(東京)では、入居を考える人たちが何を探しているかを聞き出す所から始める。

 項目の一つは「エリア」。いま住んでいる所か、子供の近くか。二つ目は「価格」。入居金や月額費用がいくら払えるのか。三つ目は「介護サービス」を求めるのか、「早めの移り住み」でコミュニティーを求めるのか。入居者側の条件を絞り込み、それに合う所を選ばなければならない。

 受けられるサービスの内容や倒産の危険性といった点は、見分けるのが難しく、現地を訪ねて確認する必要がある。「経営者や入居者から話を聞くべきです。見学者を拒む所や、入居率を偽る所、家族の面会曜日を決めている所は問題がある。ホーム内の雰囲気、入居率なども手がかりになる」と代表取締役の田村明孝さん。

 入居率から見えてくるのは経営状態。開設当初の赤字は悪いとはかぎらないが、入居率が低いと問題がある。「供給が増えたため、入居率は昨年オープンした所で45%程度。半年で2〜3割、1年で4〜5割、2年目で埋まる見込みでやっていかないといけない。1年で1割程度では改善が難しい」と目安を説明し、体験入居で自分で確かめることを勧める。

 介護サービスを求める人には、介護度に応じたケアプランと月額費用の見積書を要求するよう助言する。オプションが追加されて入居前の説明より高い額を請求される事態を避けるためだ。

 有料老人ホーム業界は急成長しただけに、サービス内容や料金の基準が明確ではなく、トラブルは少なくない。「月額18万円と説明されたが、45万円請求された」などの苦情が自治体や消費生活センターに寄せられている。

 「終の住み家にサービスも付いた契約を結び、すべてを委ねることになる。探す労力をいとわず、人が良いという話を聞くだけではなく、その上で自分も良いと思う所を選ぶべきです」と田村さんは話している。

 次回は見学時のチェック項目を細かくみていく。

(2006/09/05)

 
 
 
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