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有償ボランティアの可能性(上)

70代の女性が所有する民家を定期的に掃除する勝山満智子さん=京都市中京区


 ■介護保険見直しで注目 業者より安く家事代行 

 ボランティアは「手弁当」のイメージですが、利用者に実費や最低限の対価を負担してもらう「有償ボランティア」が、新たな支え合いの形として注目されています。介護保険が使えない高齢者宅の家事サービス、困りごとの手伝いなどを通して、生きがいや仲間を作っていこうという取り組みです。高齢者を中心に、本格化する活動の可能性を探りました。(中川真)

 「帰り際に『ありがとう』と言ってもらうことが、『次』への励みになるんですよ」

 京都市上京区のNPO法人「シーズネット京都」の勝山満智子副理事長(68)は、市内の高齢者宅の掃除などを続けている。民間業者のヘルパーではなく、無償奉仕でもない。「有償ボランティア」という形態だ。

 会社員だった勝山さんは、母親の介護を契機に退職。新たな生きがいをボランティアに求めた。「仕事や子育てを終えた高齢者が地域で支え合う場を」と4年前、仲間とともに「シーズネット」を立ち上げた。

 シーズネットの活動の柱は2つ。1つは、仲間づくりを目的としたサークル活動。もう1つが、地域での有償ボランティアだ。団体名の「シーズ」(種)には、「高齢者による新たな仕組みの『種』になりたい」との気持ちが込められている。会員は現在311人。うち約30人が、有償ボランティアの活動にかかわっており、依頼は、月20件程度ある。

 有償ボランティアが注目される理由に、介護保険の見直しがある。家事サービスの利用がしぼられる中、サービスを求める高齢者世帯に、民間業者よりも安くサービスを提供できるからだ。

 シーズネットの訪問サービス利用料は、1時間あたり会員800円、非会員1000円。このほか、1回500円の交通費を求めている。利用料の75%がボランティアをした人の対価となる。

 民間の家事代行サービスの相場は1時間あたり2000〜3000円だから、格安だ。掃除、炊事、洗濯、話し相手、簡単な大工仕事、通院や買い物の同行、ペットの世話…。内容も多岐にわたる。

 京都は住民同士の助け合いの伝統があり、全国的にもボランティア活動が盛んだ。京都市福祉ボランティアセンターの調べでは、市内には高齢者宅の生活支援を行う有償ボランティアが、少なくとも9団体あるという。

                  ◇

 「有償」と「ボランティア」は矛盾するようだが、シーズネットの仲瀬素市副理事長(64)は「活動にかかる費用をすべて持ち出すのは無理。財源のないNPOが長く続けるには、どうしても対価が必要だ」と説明する。

 仲瀬氏は現役時代、京都市役所に勤めていた。「行政ができないことをやるのが、われわれの役割だ」と強調する。介護保険で家事サービスを受けるのが難しくなっている以上、安定的なサービスを長期間、提供できる仕組みにしないと、本当の貢献にはならないというわけだ。

 一方、ボランティアらは、有償の意義について「対価を得ることで責任を自覚できる」と口をそろえる。シーズネットの場合、サービスを提供した会員の1時間あたりの対価が600円とすると、京都府の労働者の最低賃金(時給686円)を下回る。“仕事”の感覚ではできないが、参加することで“地域デビュー”を果たせる。

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 有償ボランティアが注目される背景には、介護保険で家事サービスが縮小されているだけでなく、景気回復でヘルパーのなり手が減っているという問題もある。

 そこで、介護保険サービスの事業所である「京都福祉サービス協会」(京都市下京区)は、退職した70歳以上のヘルパーOBのうち、元気な人に協力を呼びかけ、生活支援サービスの業務に再び就いてもらうことにした。OB会ができ、すでに約40人が参加を希望しているという。

 OBとはいえ有資格者なので、有償ボランティアではなく、「期間パートヘルパー」の形で雇用するという。同協会の宮路博・居宅本部長は「利用者はお金を払う以上は、質の高いサービスと責任を求めている」と“プロ”の仕事であることを強調する。

 サービス範囲は、有償ボランティアの生活支援と重なるが、実際に最も需要が多いのは、介護保険がきかない通院時の病院内での世話。掃除などが多いシーズネットと対照的だ。利用料は1時間2100円で、ヘルパーの時給は1300〜1400円程度。OBは約1割低くなるものの、できる仕事を事前に登録できるシステムだという。

 プロのヘルパーサービスと有償ボランティアの線引きは難しいが、さまざまな取り組みを繰り返すことで、徐々に役割の違いが鮮明になっていくといえそうだ。

(2007/04/10)

 

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