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定年後の仕事とお金(上)

社会保険事務所の相談窓口(写真はイメージです)


 □年金がカットされる場合

 ■失業保険と二者択一

 65歳までの雇用を企業に義務づける「改正高年齢者雇用安定法」の施行から1年。団塊の世代の大量定年で、60歳以降も老齢厚生年金を受けながら働く人が増えそうです。働き方に応じて、公的給付の受け取り方も異なる60歳代前半のお金について考えます。(寺田理恵)

 定年間近の会社員にとって、気になるのが年金。サラリーマンだった団塊の世代なら、60歳から年金の一部が支給されるが、失業保険(雇用保険の基本手当)を受けた場合は、老齢厚生年金がカットされるので、注意が必要だ。

 大阪府の上田喜美子さん(65)=仮名=は「4日分の失業保険4万円余りをもらったために、その月の年金18万円が停止されてしまいました」と話す。

 上田さんは平成12年に59歳で退職し、11月から失業保険の給付を受けた。給付額は1日約1万円だから、1カ月で約30万円だ。

 失業保険の支給期間は現在、定年退職だと最長150日。しかし、上田さんが退職した当時は、勤続年数が長い人ほど手厚い仕組みだったため、上田さんは300日分を受けられた。

 上田さんは昭和16年5月生まれの女性なので、60歳から年金が全額支給される。支給開始が近づいたので、社会保険事務所に手続きに行くと、「失業保険をもらっている間は、年金は出ません」といわれた。

 上田さんの年金は月額約18万円なので、より金額が高い失業保険を受けることにした。

                   ◇

 「長年、厚生年金の保険料を納めたのだから、失業保険が9月4日に切れたら、すぐに年金を受け取りたい」と思った上田さんは、必要な手続きを社会保険事務所で尋ねた。

 「職員の方に聞いたら『日割り計算だから大丈夫です。年金は改めて手続きをしなくても自動的に支給されます』といわれ、安心しました。ところが、待っても年金が出ないんです」。上田さんは再度、問い合わせたが、結局、9月は年金が出ないことが分かった。

 失業保険の支給は1日単位だが、年金は月単位。一般には、失業保険が切れたら、支給日数が月数に換算され、支給停止になった年金の月数の方が多ければ、その分は事後精算で支給される。

 ところが、上田さんの場合、退職は59歳。失業保険を受け取り始めた当初は年金を受けていなかった。このため、失業保険を受けた月数の方が多く、4日でも、失業保険を受けた9月は「給付を受けた月」とみなされてしまったわけだ。

 「8月いっぱいで失業保険を打ち切っていたら、9月分の年金18万円を受け取れたのに」と思うと、残念でならない。

 失業保険は一般に、150日間、120日間など、30日で割り切れる。しかし、諸条件によっては、支給日に端数が出てしまうケースもある。この場合は、端数は1カ月とみなされるので要注意だ。

                   ◇

 一方、定年退職後も働く人は、働き方や収入によっては、老齢厚生年金の一部がカットされる。この制度を「在職老齢年金」という。

 在職老齢年金は、60歳以降も厚生年金に加入して保険料を払っている人が対象。厚生年金に加入しないパートやアルバイトは対象外だ。そのため、給与の手取り額が会社員時代より下がっても、トータルの収入は変わらないケースも生じる。

 年金が減額されるかどうかの境界線は、60歳代の前半と後半で異なる。

 60〜64歳の場合、厚生年金の月額に、過去1年分の賞与を12で割った額と月給を加えた合計額が、28万円を超えるかどうか。28万円以下なら年金は全額支給されるが、超えると一定額が差し引かれる。

 60歳代後半の人は、合計額48万円が境になる。また、今月から70歳になる会社員も、60歳代後半の人と同様に減額される。

 60歳代前半では、給料が60歳時の75%未満に下がった人を対象とする「高年齢雇用継続給付」を、老齢厚生年金(在職老齢年金)と同時に受けると、年金の一部がカットされることがある。

 給料が高いと、かえって手取り収入が減る「逆転現象」が起こることもある。このため、高年齢者の雇用に詳しい社会保険労務士の渋谷康雄さんは「就業意欲を阻害する」と指摘する。

 次回は60歳以降も継続して働く人の収入である高年齢雇用継続給付と在職老齢年金について考える。

(2007/04/30)

 

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