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定年後の仕事とお金(中)


 □給料が減った人の給付

 ■厚生年金の一部停止も

 「わが家はもらえるでしょうか」「どこで手続きができますか」−。「高年齢雇用継続給付」を紹介した4月2日付「家計診断夢相談」に、たくさんの問い合わせがありました。この制度は、60歳時点よりも給料が下がった人が受けられる雇用保険の給付。定年後も働くサラリーマンにとっては収入の柱の1つです。(寺田理恵)

 大阪府の主婦、田中治子さん(57)=仮名=の夫は60歳以降も3年間、働く予定だが、手取り給料が大きく下がる。「高年齢雇用継続給付」を受けられるのではないかと考えた。

 高年齢雇用継続給付は60歳以上、65歳未満の雇用保険の被保険者を対象に、賃金が60歳時の75%未満に下がった人に支給される。給付額は、60歳以後の賃金(34万0733円未満)の最大15%。賃金の低下率によって変動する。

 「主人は公務員でしたが、57歳で退職し、嘱託として3年働きました。退職後は給料が下がりましたが、60歳以降はもっと少なくなり、手取りだと60歳のときの7割くらいです。退職後は雇用保険の保険料が天引きされています。もしかしたら受けられるかも」と田中さんは期待した。

 しかし、受給するには雇用保険の被保険者期間が5年以上必要。結局、田中さんの夫は受けられないと分かった。

 一方、神奈川県の会社員、山本順一さん(60)=仮名=は、62歳で定年退職し、その後は嘱託として1年ごとの契約で65歳まで働くことに決まった。定年後の賃金は現在の60%程度に減る見込みと、勤務先から説明を受けている。

 受給できる可能性が高いが、「職場の上司に聞いてみましたが、よく分かりませんでした」と山本さん。

 一般的な会社員が60歳以降も継続して働く場合、(1)給与(2)在職老齢年金(3)高年齢雇用継続給付−の3つの収入が生じる。しかし、高年齢雇用継続給付はあまり知られていないようだ。

 高年齢者雇用に詳しい社会保険労務士、渋谷康雄さんは「原則として企業が手続きを行うので、受給者の中にも、この制度を知らない人がいます。もし受給していれば、ハローワークから2カ月に1回振り込みがあります。これから定年退職して給料が下がる予定の人は、勤務先がこの制度を活用していなければ、手続きをしてもらえるよう働きかけてください」と助言する。

                   ◇

 60歳以降も働く場合、給与や賞与が高いと老齢厚生年金がカットされる「在職老齢年金」の制度がある。在職老齢年金を受けている人が、高年齢雇用継続給付も同時に受けると、雇用継続給付の額に応じて、年金の一部が支給停止される場合がある。

 定年後の給料が高いと、これら公的給付と給料を合わせた手取り収入が減ってしまうことがある。

 例えば、60歳前賃金が40万円だった人が、定年後に30万円をもらうより24万円の方が、公的給付を含めた手取り収入が高くなることもある。これら公的給付を活用できる「最適賃金」は60歳時賃金の約6割。このため、渋谷さんは「高年齢者が働く動機付けにならない点に問題がある」と指摘する。

 「高年齢雇用継続給付は、企業が『雇ってやる』という感覚だった時代に、65歳までの継続雇用を推進する目的で、企業の人件費負担を軽減するために作られたもの。しかし、景気回復に加えて、ここ1年間で人手が不足する事態が起き、企業側も『働いてもらわないと困る』と考えるようになっています」と分析する。

 そのうえで、「昇給しても、公的給付の影響で意味がなくなってしまいます。企業は再雇用後の『第2退職金制度』を作り、評価に応じて額を増やすような方法を検討すべきです」と提案している。

                   ◇

 これら公的給付の額は、企業側が決める給与の額によって決まる。渋谷さんは「受給者自身が注意しなければならないのは、別の企業に再就職するとき」とする。

 退職後に失業保険を受給すると、高年齢雇用継続給付が受けられなくなる場合があるからだ。

 高年齢雇用継続給付には、失業保険を受給しない人を対象とする「高年齢雇用継続基本給付金」と、いったん失業保険を受給して再就職した人を対象とする「高年齢再就職給付金」がある。再就職でも、退職後1年以内で、失業保険を受けていなければ、雇用継続基本給付金が65歳まで支給される。

 「公的給付をどのように受けると受給額が高くなるか、計算して選びます」と渋谷さん。

 定年後の働き方によっては、加入する社会保険も変わる。次回は、パートで働く事例を考える。

(2007/05/01)

 

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