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定年後の仕事とお金(下) 

常勤か、パートか−。年金暮らしでは、働く時間によって加入する社会保険が変わる(写真はイメージです)


 □年金受給者がパートで働く場合

 ■考えずに済む“扶養の壁”

 セカンドライフはのんびりと−。定年延長や退職・再雇用で、60歳以降もフルタイムで働く人が増える一方、年金収入があれば、仕事を減らして私生活を充実させるのも選択肢となりそう。今回は、年金受給者がパートで働く場合のお金について考えます。(寺田理恵)

 香川県の鈴木恵子さん(62)=仮名=はパートで働くかどうか迷っている。

 「厚生年金をもらっていますが、月8万円ほどもらえるパートの仕事が見つかったので、働こうと思っています。年収約95万になりそうですが、どんな税金や社会保険料がかかるのでしょうか。主人の税金や保険料に影響があるかどうかも心配です」

 鈴木さんは、育児に専念していた時期以外は、会社員として働いていた。年金の加入期間が約30年あり、60歳から厚生年金約110万円を受けている。夫の高志さん(64)=仮名=も、厚生年金の収入が約158万円ある。

 「パートには、夫の扶養から外れない範囲の働き方として、年収が『103万円の壁』『130万円の壁』などがあると聞きますが、年金生活でも上手な収入ラインがあるのでしょうか」と鈴木さん。

 俗に「103万円、130万円の壁」というのは、サラリーマンの夫に扶養されている主婦などがパートで働く際に、税金や社会保険料を負担する義務が生じる境目のことだ。

 妻の年収が103万円以上なら、夫は配偶者控除を受けられなくなる。130万円以上なら、妻は年金の第3号被保険者でなくなり、国民年金の保険料(月1万4100円)を自分で納めなければならない。同時に、夫の健康保険の被扶養者からも外れ、国民健康保険料の負担も生じる。

 しかし、60歳以上の年金受給者がパートで働く場合は、国民年金の保険料納付義務がないなど、やや事情が異なる。

                   ◇

 社会保険労務士の井戸美枝さんは「年金を受給しながら働く場合は、労働時間によって加入する社会保険が変わり、手取り収入も変わってきます」とする。

 パートで働く場合でも、所定労働時間が正社員のほぼ4分の3以上なら厚生年金や健康保険に加入する義務が生じる。労働時間は一般に週40時間だから、週30時間未満なら、厚生年金や勤務先の健康保険の対象にならないわけだ。

 恵子さんの場合、勤務時間が週30時間よりずっと短くなりそうなので、厚生年金の保険料は負担しない。勤務先の健康保険の加入対象にもならないので、夫婦とも国民健康保険に加入する。

 130万円の社会保険上の“扶養の壁”は生じない。恵子さんが働くことで変わるのは、税負担だ。

 これまでは、厚生年金110万円から公的年金等控除70万円を差し引いて、恵子さんの雑所得は40万円だった。パートで年に95万円働けば、給与所得控除65万円を差し引いて、給与所得は30万円。雑所得と合わせて、所得は70万円に増える。

 恵子さんも高志さんも確定申告で税金を精算するが、恵子さんの所得が40万円から70万円に増えることで、高志さんが所得から差し引くことができる配偶者特別控除は36万円から6万円に減る。夫婦とも課税対象となる所得が増え、その結果、税や社会保険料が上がる可能性はあるが、手取り収入の増加分の方が大きそうだ。

                   ◇

 週30時間以上働く厚生年金の加入者の場合、賃金が高いと年金がカットされる場合がある。しかし、厚生年金に加入しなければ、賃金が高くても、年金と賃金の支給調整が行われない。そのため、正社員なみに働くよりも手取り収入が高くなるケースもある。

 しかし、30時間を超えて働くのも、デメリットばかりではない。

 井戸さんは「厚生年金に加入すれば、60歳未満で一定収入以下の配偶者を第3号被保険者にでき、配偶者の保険料を払わずに済みます。会社の健康保険にも加入するので、家族を被扶養者にでき、国民健康保険よりも低い保険料負担ですむ場合があります」と指摘する。

 60歳以降も厚生年金に加入して保険料を納付すれば、厚生年金の報酬比例部分に反映され、少しは年金が増える。

 また、週20時間以上などの条件を満たすと、雇用保険の被保険者となる。

 サラリーマンなら会社任せで済んだ税金や社会保険も、いったん会社を離れたら諸手続きを自分で行うことになる。定年後の暮らし方に応じて、ライフプランを立てたい。

(2007/05/02)

 

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