産経新聞社

ゆうゆうLife

鬱病を克服したタレント 千葉麗子さん(上)


 ■大事なカミングアウト 友人の支えで乗り切る

 16歳でアイドルとなって20歳でIT企業社長に転身。現在はヨガスタジオの経営など、マルチぶりを発揮する千葉麗子さん(33)。活躍の一方、7年前には鬱病(うつびょう)と診断され、精神的な苦しみを経験しました。周囲の人に支えられて克服したという千葉さん。自らの経験を基に語ります。(佐久間修志)

 鬱病になったのは、ちょうど長男を産んだ後の育児休暇中でした。兆候は摂食障害。自分で食欲をコントロールできなくなっちゃった。

 おみやげでもらったおまんじゅう1箱、24個をぺろっと食べてしまうとか。ひたすらむさぼるように食べてはキッチンやトイレで吐く。そんな状態でした。

 おなかがすいているんじゃないんだよね。心が満たされないから、食べることで満たされようとする。でも自己嫌悪でどんどん惨めになって。ある日は大量に食べて、翌日は全く食べない。その繰り返しで体重が38キロまで落ちて。女性の機能が落ちて更年期障害みたいになっちゃった。

 夫にも言えませんでした。2年間同棲(どうせい)して結婚。今までどんなことも包み隠さず話してきたけど、このみじめで異常な状態だけはどうしても知られたくなくて。夫に知られないよう、大量のゴミを処理しながら、1人で苦しんでいました。

 そんなあるとき、気がついたら、冷蔵庫の中のピーナツバターをひと瓶、空にしていました。分かっているのに食べずにはいられない。このままでは本当に死んでしまう。そう思って、とうとう夫に打ち明けました。泣きながら「私を見捨てないで」と何度も心の中で繰り返しました。

 夫は私を抱きしめてくれ、病院を探してくれました。こうして、鬱病と診断されました。

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 私にとって、育児休暇の6カ月は社会とのブランクを感じた時期。幸せな家庭にあこがれて結婚、出産。幸せの絶頂のはずだった。なのに、臨月まで仕事をした後、長男につきっきりの日々を送ったら、育児ノイローゼもあって孤独感に陥ったんです。

 ほかにも、産後に過激なダイエットをしたり、父親ががんになったり、すべてのことが重なって状態がひどくなりましたね。

 今は相談に乗ることも多いんですけど、鬱になる人って完璧(かんぺき)主義の傾向がありますね。「頑張り屋さん」が多いかな。あとは幼いころの家庭環境にゆがみがある場合。それと、自分でなんでもしようとする人。私にもそんな傾向はあったなあ。

 私も家庭環境は悪かった。両親は別居していたし、母から抱きしめられた記憶が一回もない。「愛って何なの」っていうのがありました。だから、甘えることを知らない子供だった気がします。

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 夫に打ち明けてからは、摂食障害は改善しました。夫が料理してくれて、食事ってこんなに楽しいんだって。それで鬱も少しずつ良くなった。

 やっぱり一番大事なのは「カミングアウト」。醜い自分を見られたくないから、内緒にしたい。それは分かるの。でも、話すしかない。私は夫だったけど、親でも、友人でも、ブログでもいい。とにかくSOSを出さないと。

 ただ、病気になると、人が信じられないんですよ。「この人が何をしてくれるの」って。どんなに好き、愛してるって言ってても。どんなに信頼していた人の話ですら、耳に入らないんです。ひどい時って。

 でも、本当に愛してくれている人って、それくらいじゃ見捨てない。私もそれで感謝って気持ちが生まれました。

 友人も大事。一緒に鬱についての本を書いた「マユ」(橋本真由美ハーシー社長)もそうだけど、鬱の友人を持つといい。すごく助かったな。病気のことも分かってくれるし。ポジティブな人がいると変わる。人からの影響ってあるからね。周りに結構、鬱の人っているよ。

 平成18年には鬱が再発しましたが、これもマユのおかげで乗り切れたと思う。ヨガスタジオ設立で一緒にやってきましたが、鬱になってからも連絡を取り合って、もっと深い関係になれた気がします。

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【プロフィル】千葉麗子

 ちば・れいこ 昭和50年生まれ。平成3年にアイドルデビュー。「チバレイ」の愛称で「電脳アイドル」として人気に。7年に引退後、IT関連企業「チェリーベイブ」を創設。9年にヨガを始め、後にシステム開発会社「ハーシー」の橋本真由美社長と共同でヨガスタジオを開設した。自身の「インテグラル・ヨーガ麻布スタジオ」で、インストラクター統括も務める。

(2008/07/24)