産経新聞社

ゆうゆうLife

鬱病を克服したタレント 千葉麗子さん(下)

「ヨガはスタイリッシュというだけでなく、精神的な部分が大きいです」と話す千葉麗子さん


 ■大切な「自分への厳しさ」 使命あることの幸せ実感

 2度にわたる鬱病(うつびょう)を乗り越えた千葉麗子さん(33)ですが、実は「他界した父親も鬱病でした」と明かします。「鬱に対する誤解は多い。私も父を分かってあげていたら」と悔やむ千葉さんですが、「鬱病の人だって甘えてはいけない」とも。“同志”にエールを送ります。(佐久間修志)

                  ◇

 私が鬱病にかかったのは、遺伝的要素もあったと思う。父もかつて鬱でしたから。私が芸能界に入って家を出たことや、職場環境が変わったことが影響したみたい。

 父は鬱のころ、家出してアイドルをしていた私に会いに来て。実家の福島から新幹線にも乗らず、歩いてきたこともあった。病気のことを知らなかった私は、そんな父に家に帰るよう説得してました。

 以前はこんなに鬱が注目されてなかったし、認められていなかった。今は、知っていれば父を救えたんじゃないかって後悔してます。父は数年後、肺がんでこの世を去りましたが、鬱で体がむしばまれたような気がするんです。

 鬱に対する誤解ってある。鬱ってガクンと落ち込みが続く日もあるけど、大丈夫な日もある。いい言葉は、いい状態の時にしか入らない。だから「ポジティブでいようね」っていうのは、いい状態の時にかける言葉。これはぜひ周りの人に知っていてほしい。

                ■ □ ■ 

 鬱の人って、周りからみたら、さぼっているように見えるんでしょうね。でも、その意見も分かるなあ。だって私、社長業もしているから。鬱に甘えるようじゃ良くない。それは絶対に自分に跳ね返ってくる。私も自暴自棄になっていたこともあるけど、このままでいいやとか、ベッドから出たくないとかじゃ、引きこもりとかと同じじゃないかな。

 みんな否定したくないんだよ、自分のこと。だから「自分への厳しさ」を持てるかどうかだね。いろんな相談を受けて感じるのは、鬱の人は、やっぱりどこか、逃げているところがある。

 そうすると、もったいないんだよ。時間的・年齢的なロス、人に対する愛もロスが出てくるから。自分から逃げると後々、こういった損失に苦しむんだよ。

 世の中には、病気とつきあって生きる人がいる。鬱も同じ。心の病気だからって家に閉じこもっているの? 引きこもるの? もっとつらくても、一生懸命やっている人っている。

 医師も本当はそう言いたいんじゃないかって思うの。でも、病状が悪くなったら怖いでしょ。それでも、本当に治したいなら、言ってあげたい。ヨガスタジオに来る鬱の子にも、「治したいから、厳しいことも言うね」って話している。

                ■ □ ■ 

 私は鬱のときも、社長の仕事をしていました。もちろん、できない業務はあるよ。でも、もしかしたら、芸能界で鍛えられたのかも。「どんな状態でも笑顔」っていう世界だったし。

 会社の存在は自分をポジティブにするには大きかった。与えられた使命があるのは幸せだよね。どうでもいい人間なんていないんだけど、「自分はどうでもいい人間かも」と思った瞬間、鬱はひどくなるから。鬱の人の前では「あなたには使命がある」って話します。いかに安心させてあげるかが大事。頑張り屋さんが多いから。

 鬱病になって、考えが変わったこともある。鬱になる前、ある社員から仕事のことで「もう限界です」って言われたことがあるのね。私の中では当時、「限界」って言葉はなかった。その人が限界と決めたから限界になるだけで、限界なんてないと思ってたけど、鬱を経験したら「限界はあるな」って。でも、今は治ったから、「やっぱり限界はないや」って思ったり。あはは、懲りないヤツだよね。だからまた鬱になっちゃうのかなって思っている。

 まあ、なったらなったで。2回目の鬱のときも、療養を兼ねて、アメリカにヨガのインストラクター資格を取りに行ったりした。精神的にキツイから、なるべく鬱は避けたいけど、なったら自分のペースで治す時間を有効に使おうと思ってます。

(2008/07/25)