産経新聞社

ゆうゆうLife

元シブがき隊 布川敏和さん(43)(下)

小学生になった花音ちゃん。布川さんとエコ活動にも参加している=東京都内(中川春佳撮影)


 ■病気は家族で闘うもの 芸能以外の活動に力も

 次女、花音(かのん)ちゃん(7)の手術、闘病を経験した布川敏和さん(43)は「花音だけじゃなく、長男、長女にも寂しい思いをさせた」と当時を振り返ります。また、「花音の病気は、次代を担う子供のために、と僕が考えるきっかけになった」とも話す布川さん。チャリティーなど、芸能以外の活動にも精力的です。(佐久間修志)

 花音の病気では、お兄ちゃんとお姉ちゃんには寂しい思いをさせました。もともと、2人が望んだ妹でしたが、花音は生まれてすぐにNICU(新生児集中治療室)行き。2人はしばらく、ガラス越しでしか妹を見られなかった。きっと、「この先どうなるんだろう」って、子供ながらに感じていたと思います。

 5カ月たって、先生の許可で初めてだっこさせてあげられたときはうれしかった。ほんの一瞬だったけど、あの光景は忘れないと思います。

 2人を見て、病気は家族で闘うものだと改めて感じました。花音の世話や仕事に追われて、2人を構ってあげられなかったけど、親が病院へ行っていれば、自分たちでカギを開けて留守番したり。後で聞いたんだけど、先に授業の終わる妹が、お兄ちゃんを待って、一緒に帰ってきたんだって。じーんときますよ、そういうのを聞くと。

 退院したら、2人で花音のお世話役を取り合っていましたね。ミルクもおむつもみんなやるから、ひょっとしたら、親の僕が一番、世話をしていないくらい。本当、小さいお父さんとお母さんです。僕はおじいちゃんみたい。2人は抱っこもうまくてね。ほかの新米パパじゃあ、太刀打ちできないと思いますよ。

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 花音の退院と前後して、僕の父母が亡くなるという出来事もありました。最初は、「人間にはいつか最期があるから」と割り切っていたつもりでしたが、しばらくして、「もう、親はいないんだ」とふと考えたんです。それで精神が不安定になった時期もありました。今思うと、親にすごく愛情を注がれて育ったんですよね。だから、不安定にもなったし、僕自身も家族への思い入れが強いのかもしれません。

 長男は今、同じ事務所で俳優をしているのですが、彼のブログに「誕生日は親に感謝する日」と書いてあったんです。「親がいなけりゃ自分は生まれてこなかった」。僕がそれに気づいたのは最近ですけど、あいつはもう、そういう感覚があるんですね。

 長男は今も花音と大の仲良し。最近、病院のドラマをやったときは、「花音のときのことを思いだす」と話していたそうです。家族を大事にすることが受け継がれているのはうれしいですね。

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 花音の病気のことを本にしたのは、「花音は治ったけれど、まだ病気で苦しんでいる人がいるから」と考えたからです。出版後、ブログに「私の娘は亡くなりましたが、この本は今までの私にご苦労さま、といってくれている気がしました」といった書き込みを見つけて、涙が出ました。

 花音の病気、治療を経て、子供たちのためのチャリティーや、エコ活動にも、力を入れるようになりました。花音が入院した病院は全国から病気の子供が集まってきます。長期に宿をとって看病する家族もいます。そんな家族のために、日本マクドナルドなどが支援する財団の宿泊施設があるんですよ。僕もそれに賛同して昨年、チャリティーイベントで親善大使をさせていただきました。

 エコ活動では、普段から海に潜るダイバーが海に関するデータを集め、環境保護に役立てようとの取り組みがあり、そのイベントに参加しました。環境保護のメッセージをプリントしたTシャツのブランドも立ち上げ、売り上げの一部を環境団体と、子供たちに支援している団体に寄付するつもりです。

 昨年、うれしいことがあったんです。花音が小学校に入学して5月に運動会があったんですが、かけっこで1等を取ったんです。カミさんと泣いちゃいました。ゴールテープを切った瞬間が「こんなに元気になったよ!」っていう花音からのメッセージに見えました。

 スタートで出遅れたけど、どんどん抜いていって…。なんだか、あの子の生い立ちと重なってみえましたね。

(2008/10/03)