産経新聞社

ゆうゆうLife

フリーアナウンサー雪野智世さん(45)(下)

10センチ大の子宮筋腫を抱え出産に臨んだ雪野さん。帝王切開では、緊急輸血する事態となった


 ■「年齢であきらめないで」 健康な暮らしが出産力に

 44歳で初めての出産に臨んだフリーアナウンサーの雪野智世さん(45)。子宮筋腫を抱えての妊娠は、さまざまな身体的負担を強いられるものでした。帝王切開で迎えたお産では、予期せぬトラブルにも見舞われます。高齢、子宮筋腫というハイリスクな出産を振り返ってもらいました。(文 篠原那美)

 切迫流産の危険から、1カ月の入院生活を送ることになりましたが、妊娠4カ月目に入り、ようやく自宅に帰ることができました。

 ただ、安静を心がけていても、家事などで身体を動かすと、ときどき激しい痛みに襲われます。また出血するんじゃないか…。そんな不安から逃れることができませんでした。

 症状が安定したのは5〜6カ月のころ。散歩やマタニティーヨガなど、妊娠生活を楽しめるようになりました。

 赤ちゃんも順調に育っていましたが、困るのは、赤ちゃんだけでなく筋腫にも栄養がいってしまうこと。

 当初、直径5センチ大だった筋腫は、安定期には7〜8センチに、最終的には10センチとなり、位置も上へ上へと上がってきて、あばら骨の下の方まできていました。

 子宮の中で筋腫と同居している赤ちゃんは逆子になり、さまざまなリスクを考え、出産は帝王切開で行うことになりました。

 今の時代、普通に行われている手術ですから、それほど抵抗感はありませんでした。出血が多い場合には輸血をする。場合によっては子宮をすべて摘出する可能性がある。手術の直前、リスクに関する説明を受け、そのことへの同意書にサインをしたときも、まさか、そんな事態になるはずはないと安心しきっていたのです。

 ところが、いざ出産に臨んでみると、予想外の事態が起きたのでした。

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 手術室に入り、下半身麻酔を受けて、帝王切開に臨みました。胸から下は布で仕切られており、手術の様子は見えません。それでも、医師や看護師の会話や様子で、事態が緊迫していることが伝わってきました。

 後から聞いた話ですが、おなかを切ってみたものの、頭や手足など、取り出しやすい部位が見あたらなかったというのです。大きな筋腫が邪魔をして、逆子だった赤ちゃんは横向きに。なかなか取り出せず、おなかを押したり、無理矢理引っ張ったり、最後は掻き出すようにして、赤ちゃんは取り上げられました。最初に出てきた部位は右腰だったそうです。

 産声を聞いた後、私の記憶は残っていません。手術は、さらに3時間近く続きました。

 医師の話によると、胎盤が筋腫と癒着して、はがすのが難しかったそうです。その処置で大量に出血し、3000ccの緊急輸血をしたといいます。さらに、2つ目の筋腫も見つかって、その摘出も行われました。

 これが、高齢出産と子宮筋腫というリスクを抱えたお産の最大の山場となりました。

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 昨年9月、この経験をまとめた本「出産力」を出版しました。妊娠と結婚についてブログで報告したところ、多くの反響をいただいたことが、きっかけになりました。

 ブログで報告をしたときは、私の出産に興味を持つ人なんて、ほとんどいないだろうと思っていたんです。ところが、思いのほか、反響が大きく、1日に74万件ものアクセスが。寄せられたコメントの7〜8割が、独身女性や高齢出産を希望する女性たちからのもので「私もまだいけるかもしれない」「勇気づけられた」…。そんな内容がほとんどでした。

 本を通じて伝えたかったこと。それは「自分の身体を年齢だけで区切らないで」ということです。

 私自身、局アナをしていた20代のころは、徹夜や外食が当たり前という不規則な生活でした。肉体的には若くても、そんな生活を送っていては妊娠しづらい身体になっていたと思います。

 それが、30代後半になると、健康作りに気を使うようになりました。ジョギングやゴルフといった運動、十分な睡眠、バランスのいい食事。そういった健康志向の生活を続けた結果、妊娠力も高まったのではないかと思っています。

 30代後半だから、40代だから、もう妊娠・出産は無理。そんな風にあきらめず、まずは身体作りから取り組むことが、大切なんじゃないでしょうか。

(2009/02/06)