管理職に残業代は出るか?
【出題】
管理職の残業について話しています。正しいのは誰でしょう。
尾張さん 課長になったんだけど、仕事の内容はあまり変わらないのに、管理職だから残業代がつかないんだって。生活が厳しくなるなあ。
紀州さん 管理職だから残業代がつかないのは仕方ないけど、深夜の割増賃金もないのはキツイね。
水戸さん ファミリーレストランの店長をしているけど、ちゃんと残業代はもらっているよ。うちの会社では、店長クラスは管理監督者じゃないからね。
【解説】
管理職には時間外労働の残業代がつかない、と思い込んでいる方が多いですが、ちょっと違います。
労働基準法では、「管理監督者」(事業の種類にかかわらず、監督もしくは管理の地位にある者)は、労働時間、休憩、休日の規定から除外されています。管理監督者には、時間外割増、休日割増賃金は支払わなくともいいルールです。
といっても、「管理職=管理監督者」ではありません。労基法では、肩書でなく仕事の中身によって、管理監督者かどうかを判断しているのです。
判断のポイントは(1)管理職手当、役職手当などの特別手当が支給されている(2)出・退勤が当人の裁量に任されており、タイムカードなどで管理されていない(3)ある部門全体の統括的な立場にある(4)部下の労務管理上の決定権などで、一定の裁量権があり、人事考課や機密事項に接している−といったことです。
このように、管理監督者はまさに現場の責任者なので、残業代がつかない代わりに、それに見合う以上の金額を給与としてもらっています。忙しいと、休憩や休日も思うようにとれないこともあり、その分もすでに給与に上乗せされている−という考え方です。
ですから、課長や部長になったといっても、勤務の実態が一般従業員のときと何も変わらなければ、管理監督者とはいえません。このため、時間外労働に対する残業代は支払われます。
一方、年次有給休暇と深夜業の扱いは、管理監督者も一般社員と同じです。勤続年数に応じて年次有給休暇はありますし、深夜に働けば、25%以上の割増賃金が支払われます。ただし、就業規則などで、深夜業の割増賃金を含めて所定労働時間を定めている場合、会社は深夜業の割増賃金を支払う必要がありません。
【解答】
肩書が課長でも、仕事が一般社員と同じなら残業代はつくので、尾張さんは誤り。管理職も深夜に働けば、通常は割増賃金が支払われるので、紀州さんも誤り。正解は、管理監督者でない店長だから残業代が出ると答えた水戸さんです。
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この欄は社会保険の制度に詳しい専門家が執筆。http://www.e−nenkin.net/で出題の補足説明をしています。監修は「社会保険博士」北村庄吾、今回の担当は社会保険労務士、吉田泰子です。
(2007/08/07)