産経新聞社

ゆうゆうLife

短期間で離職、失業給付は出るか

 【出題】

 健さん(40)は10年勤めた甲社を退職し、すぐに乙社に転職しました。しかし、乙社の業績が急激に悪化し、10月半ばに3カ月で解雇されました。健さんが失業給付について友人と話しています。正しいのは誰でしょう?

 さんまさん 乙社に3カ月しか勤務していないから、失業給付は出ないよ。

 紳助さん 甲社で失業給付をもらってないから受けられるよ。でも、前職は自己都合の退職だから、すぐには受給できないね。給付日数も少ないよ。

 松本さん 勤務が前職と連続しているから、受給できるよ。解雇だから、すぐに手厚い失業給付が受けられるよ。

 【解説】

 雇用保険の基本手当(失業給付)の受給資格は、離職理由と被保険者期間で判断されます。今年10月の雇用保険法の改正に伴い、要件が厳しくなりました。一身上の都合や転職希望など、会社を自己都合で退職した場合には、原則として最低1年間(改正前は6カ月間)、雇用保険に加入していたことが条件です。

 ただし、次のいずれかに当てはまる人には、例外として、改正前と同様に被保険者期間が6カ月以上あれば、支給されます。(1)被保険者期間6カ月以上12カ月未満で、心身の障害や親族の介護など正当な理由で自己都合退職した人(2)倒産、解雇など、会社都合で退職を余儀なくされた人−で、「特定受給資格者」といいます。

 失業給付の給付日数は、加入期間、離職理由、離職時の年齢で異なります。自己都合で退職した人は90〜150日、特定受給資格者は、90〜330日((1)で退職した人は90日)です。

 受給開始時期も、離職理由で差があります。特定受給資格者は、ハローワークに求職申し込み後、7日の「待期期間」が過ぎれば支給を受けられます。しかし、自己都合退職者は待期期間に加えて、3カ月の給付制限期間が過ぎないと、支給を受けられません。

 健さんのように、乙社の離職票で受給資格要件を満たさない場合、給付の判定は2枚の離職票をハローワークに提出することで行われます。健さんは(1)前職で失業給付を受けていない(2)甲社と乙社の間のブランクが1年以内−の2つの要件を満たすため、被保険者期間が通算されます。

 ただし、今回の法改正で、離職理由は直近の理由で判定されることになりました。健さんの離職理由は乙社で判定されます。

 【解答】

 松本さんが正解。健さんは特定受給資格者となり、ハローワークに求職申し込み後、8日目から240日分の失業給付を受けられます。

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 この欄は社会保険の制度に詳しい専門家が執筆。http://www.e−nenkin.net/で出題の補足説明をしています。監修は「社会保険博士」北村庄吾、今回の担当は特定社会保険労務士、鎌倉珠美(神奈川)です。

(2007/11/06)