【出題】中小企業のA社。賃金制度を改定し、一部の社員を対象に年俸制を導入することにしました。基本年俸の16分の1を月給として、残りを夏冬の賞与として16分の2ずつ支給する予定です。制度設計の際に、残業手当について意見が割れました。正しいことを言っているのは誰でしょう?
島津社長 年俸は労働時間に関係なく、成果に対して払うのだから、残業手当を払う必要はない。
大久保部長 月給部分については、月給で受け取る人と同様に、残業手当の計算が必要です。ただ、残業手当を計算する際には、賞与部分は含めません。
桐野課長 月給部分だけでなく、賞与部分も含めた年俸の総額について、残業手当を計算しなければいけません。
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【解説】仕事に対する報酬を年単位で決める年俸制を導入する会社が増えています。しかし、月々の残業手当について誤解も多く、深刻なトラブルの原因となっています。大きな誤解の一つが「年俸制には残業手当は不要」というものです。
労働基準法上の管理監督者など、労働時間の規制の適用除外者でない限り、残業手当(割増賃金)を支払わなければなりません。また、管理監督者であっても、深夜業の割増賃金は支払う必要があります。
残業手当込みの年俸契約も可能ですが、実際の残業時間が規定していた残業時間を超える場合はやはり、差額の割増賃金の支払いが必要です。
残業手当は「通常の労働時間の賃金」に「時間外労働をした時間」と「割増率」をかけて計算します。月給で受け取っている人の場合は、各種手当を含んだ月給額をその月の所定労働時間で割った時間あたりの額を「通常の労働時間の賃金」とします。時給で受け取っている人は時給そのものが「通常の労働時間の賃金」となります(手当が別途、支払われている場合は、1時間あたりの手当額に含めて計算します)。
年俸の人についても考え方は同じで、年俸額を12で割ったものを月給とみなして計算します。毎月の支給額が、年俸の16分の1などでも、あくまで当初決定した年俸額の12分の1を月給とするところに注意が必要です。基本年俸の一部分に「賞与」という名称をつけて、計算の基礎から外すことは許されません。
ただ、予想を大幅に上回る業績をあげたことに対する文字通りのボーナス(当初設定した基本年俸以外のもの)などは、割増賃金の計算から外してもよいとされています。
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【解答】正しいのは桐野課長。「年俸だから残業代はいらない」という島津社長は間違い。残業手当の計算基礎を年俸の16分の1とした大久保部長も誤りです。 ◇
この欄は社会保険の制度に詳しい専門家が執筆。http://www.e−nenkin.net/で出題の補足説明をしています。監修は「社会保険博士」北村庄吾、今回の担当は特定社会保険労務士、桑原和弘(東京)です。
(2008/03/18)