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モンゴル 遊牧民の置き薬(中) 受け入れられた富山方式

 モンゴルは家畜を飼い、移動しながら生活する遊牧民の国だ。全人口約250万人のうち遊牧民は約90万人。だが地平線を見渡すほどの草原だけに、ひとたび病気になるとゲル(遊牧民住居)から遠く離れた医療機関まで行かなければならない。医療の空白は同国の懸案の一つだった。

 「ぜひ遊牧民の健康のため支援を」。平成13年、訪日したモンゴルのナンバリン・エンフバヤル首相(当時)が、日本財団(笹川陽平会長)に要請。これを契機に、財団が現地調査を開始し、NGO「ワンセンブルウ・モンゴリア」をモンゴルで発足させた。16年から富山方式にならった置き薬事業を始め、初期治療に重点を置いた試みが始まったのである。

 ただ、代金と引き換えでない、この日本固有の方式が外国で受け入れられるのか。「懸念はありました。しかし私たちは、遊牧民が義理堅い風習で、置き薬を使い逃げなどしないと確信して事業を始めたのです」と、森祐次同NGO理事長は話す。

 なぜか。ゲルには見知らぬ遊牧民が前触れなく訪ねて休憩したり泊まったりするが、分け隔てなくもてなす風習がある。留守の間もゲルに食料を置き、無人でも利用してよい。このことは、かつてモンゴルを訪ねた故司馬遼太郎氏も「モンゴル紀行」の中で触れた。

 森理事長は「おそらく自然の厳しい草原では、そうした相互扶助の精神が不可欠なのでしょう。置き薬もその一つとして受け入れられれば、住所が定まらない遊牧民でも代金回収が可能と踏んだのです」と語った。

 実際、事前説明も奏功し、置き薬の利用世帯の8割以上がきちんと代金を支払った。「残る2割は先用後利の仕組みを理解していなかったり、現金収入のあてが外れたためで、悪意はほとんどない」

 この事業は医薬品を無償提供する従来型の途上国支援ではない。モンゴル医薬品を詰めた箱を配り、代金を回収し、また配る。「こうした仕組みが根付けば遊牧民の健康はもとより、モンゴルの自立にも役立つはずです」と森理事長は強調した。(柳原一哉)

(2006/10/20)

 
 
 
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