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崩れゆく支え合い−格差時代の社会保障(9)

 □税金や国保料…年金

 ■同じ単身でも負担に差

 年金生活の支出で、大きな割合を占めるのが税や国民健康保険料。高齢者を対象とした控除が廃止・縮小され、負担増に悲鳴が上がっています。しかし、「サラリーマンと専業主婦の妻」の世帯で、夫に先立たれた妻が受け取る遺族年金は非課税。年金生活は課税の程度で大きく違ってくるため、単身者などから疑問の声が上がっています。(寺田理恵)

 生活のために働き、親の介護もする。シングルの人生は、世間が思うほど気楽ではない−。シングルの、自称「大阪のおばちゃん」たちの介護体験談は、シングルと仏壇の関係で盛り上がった。

 「兄妹が何人いても、独身者が介護をするのよ。だから、うちには仏壇がある」

 「シングルの家には、たいてい仏壇がある。うちにも仏壇、あるよ」

 大阪市に住む独身の山崎智子さん(65)=仮名=の自宅マンションにも、やはり仏壇がある。

 「現役時代は親の介護も家事もして、男の人並みに働いて税金も払ってきました。老後も税金を払っているのに、夫に先立たれた人の遺族年金はもっと多くても、非課税で国保料も安いなんて…」と、不公平感を募らせる。

 山崎さんは昭和35年、18歳で働き始めた。自分でマンションを購入して母親と暮らし、2度の単身赴任も経験した。62年に母親が入院したときは、病院に泊まり込んで通勤。転院を繰り返す母親の介護と仕事の両立に、時間もお金もかかった。

 「兄が3人いますが、母をみたのは、独身の私。母の年金は7万円で、介護費用は全部、私が払い、母のお葬式代も私が出しました」と振り返る。

 6年間の介護を終え、これからは老後資金をためようと思った矢先に、勤務先の経営が悪化した。給料は遅延や分配が続き、秘書だった山崎さんは、社の金策にも追われた。ストレスがたたったのか、58歳でがんが見つかり、大手術を機に59歳で退職。平成12年、生命保険会社や大手百貨店などの大型倒産が相次いだ年だった。

 退職後、勤務先は間もなく倒産。秘書だった山崎さんも、債権を回収する「整理回収機構」に呼び出されるなど、心労が続いた。

                   ◆◇◆

 山崎さんは60歳から厚生年金が受けられる年齢だが、65歳まで任意で国民年金の保険料も負担した。若いときの未加入期間分をうめ、少しでも年金額を増やしたかったからだ。

 「40年働いて年金額は216万円。その中から税金も国保料も払っています」という。

 この世代の女性は一般に、男性との賃金格差があり、厚生年金額は男性に比べて少ない。しかし、収入が男性並みだった山崎さんは年金制度では、男性単身者モデルに近い。現役世代の手取り収入に対する年金額の比率(所得代替率)は、厚生労働省がモデルとする夫と専業主婦の世帯に比べて低い。

                   ◆◇◆

 納得できないのは、同じ単身でも、専業主婦だった人が夫に先立たれた後で受け取る遺族年金が非課税で、所得税や住民税がかからず、国保料も少なくて済むことだ。

 山崎さんはため息をつく。「私は一昨年、国保料が年に25万円、介護分も含めると30万円近かった。でも、遺族年金を受けている人は、私以上に年金があっても非課税で、保険料も月に数千円で済むなんて…」

 遺族年金が非課税だと山崎さんが知ったのは、平成18年初め。確定申告を前に、国保料が上がるのではないかと心配していたときだ。「国保料が高いと、日ごろ負担に思っていただけに、本当にびっくりしました。もっと公平にやってほしい」。当時の驚きを、山崎さんはこう話す。

 国の税制改正で65歳以上を対象とする老年者控除は廃止、公的年金等控除も縮小されたため、この年、住民税が上がるといわれていた。しかも、大阪市は平成17年度まで、国保料を住民税と連動する方式で計算していた。山崎さんも「税も保険料も高くなるのでは」と戦々恐々としていたのだ。

 しかし、大阪市は18年度に、住民税を基に国保料を計算するのをやめた。国保加入約60万世帯のうち、非課税世帯が65%を占め、残り35%の保険料が高くなり過ぎて負担感が強まっていたからだ。政令指定都市では、住民税を基に国保料を計算するところが多かったが、ここ数年で総所得を基にする計算式に変更が相次いでいる。

 山崎さんの国保料は昨年、18万円に下がった。しかし、遺族年金には所得税や住民税がかからず、国保料も低くなることに不公平感は残る。

 遺族年金や、これに対する非課税措置は「サラリーマンと専業主婦」の世帯が恩恵を受ける。かつては専業主婦のいる世帯が一般的だったが、現在は社会保障を支える世代で単身や共働きが増加していることもあり、高齢期の遺族年金の扱いには異論も出ている。現行制度に不公平感を抱く世帯が増えたとき、支え手の理解を得るのは難しくなりそうだ。

(2007/02/16)

 

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