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被扶養者資格失う 年収130万円の“壁” 

第3号被保険者になるには、年収に基準がある(写真はイメージです)



 ■交通費も収入扱い

 サラリーマンの妻がパートで働く場合、夫の扶養になるかどうかの収入ラインに、「103万円」「130万円」の2つの“壁”があります。しかし、そこに含まれる収入の項目は、それぞれ異なります。誤解が多いのが交通費です。(寺田理恵)

 東京都の杉本洋子さん(42)=仮名=はこの春、夫の勤務先から健康保険証の返却を求められた。ずっと、夫の被扶養者だった杉本さんにとっては、青天の霹靂(へきれき)だった。

 「パート収入に、交通費を加算するから、収入が健康保険の扶養枠を超えると言われたんです。健康保険の被扶養者資格を、さかのぼって失い、その間の医療費も請求されるとのことで、焦っています。交通費は収入に入らないと思っていました。知っていたら、その分、収入を減らしたのに、と納得がいきません」

 勤続10年余りの杉本さんは、パート先の信頼も厚く、年を追うごとに仕事量が増えた。しかし、サラリーマンの妻として社会保険の被扶養者にとどまっていた。

 昨年の年収は年末調整で123万円。一昨年より約20万円アップしたが、130万円内に収まったと安心していた。

 ところが今年4月、夫の勤務先の求めに応じて源泉徴収票と給与明細を提出したところ、交通費10万円が年収に加算された。この結果、健康保険の被扶養者資格をさかのぼって失うことになったのだ。

 代わりに、国民健康保険に加入し、保険料を負担しなければならない。医療費の窓口負担は3割で、変わらないが、「さかのぼって扶養を外れるので、その間に夫の医療保険から給付された医療費は、返還を求めると言われました」(杉本さん)という。

 ショックだったのは、それだけではない。年金制度でも、保険料を納付せずに済む「第3号被保険者」の資格を失い、第1号被保険者に変わるというのだ。国民年金の保険料(平成19年度は月額1万4100円)も自分で納めなければならない。

 「パート仲間に聞いても、みんな『交通費は非課税だから、入らないはず』といいます。どうして交通費が加算されるのでしょうか」と杉本さんは疑問を抱く。

                   ◇

 社会保険労務士の井戸美枝さんは「パート収入の“壁”で誤解が多いのが、交通費を含むかどうかです」と指摘する。

 一口に「年収の壁」といっても、税制の壁にあたる103万円と、社会保険の壁にあたる130万円があり、年間収入とみなされる範囲がそれぞれ異なるからだ。

 103万円は、所得税の給与所得控除65万円と基礎控除38万円を合わせた額。所得が103万円以下だと、所得税の納税義務が生じず、夫は配偶者控除38万円を受けられる。通勤手当は非課税(限度額月10万円)だから、ここには含まれない。

 一方、130万円は健康保険の被扶養者と認定される基準額。配偶者の年間収入が130万円(60歳以上と障害者は180万円)未満で、被保険者の年間収入の2分の1未満なら、原則として被扶養者になる。年金制度も、同じ基準だ。

 130万円の認定では、課税か非課税かではなく、継続的な収入すべてが対象。だから、通勤手当も基本的には収入とみなされる。ただし、収入の範囲は本来、保険者が判断するので、何が含まれるかは各健保組合などへの確認が必要だ。

 杉本さんのように、被扶養者認定を外れたケースについて、井戸さんは「国民年金保険料の納付は、2年前までなら時効にならないので、後から納めれば、未納にならずに済みます。これ以外に、夫が勤務先から支給される扶養手当も、130万円が基準になっていれば返還を求められる場合があります」と注意を促す。

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 杉本さんは、被扶養資格を失う時点をまだ知らされていないが、空白になる期間の国民年金保険料を納めるつもりだ。

 しかし、国民健康保険料については「いったん返還させられる医療費を、改めて国保で支給してもらえるのでしょうか」と不安がつのる。

 医療費がさかのぼって給付されるかどうかは、「やむを得ない理由があるか否かにより、市町村が個別に判断する」(厚生労働省)という。杉本さんは資格喪失日が分かり次第、区役所に相談することにした。

 結局、自身で保険料を納めるメリット、デメリットを考えた杉本さんは職場に掛け合い、勤務時間を増やして、自身が健康保険と厚生年金に加入することにした。所定労働時間が正社員のおおむね4分の3以上なら、パートも社会保険に加入できるからだ。「厚生年金に入れば、老後の年金額も増やせます。今までも、仕事があれば、時間だから帰るという働き方はしてこなかった。働きぶりを認めてもらえました」と、杉本さんは話している。

(2007/05/18)

 

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