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世帯分離 「自己負担を減らしたい」(上)


 ■同住所で住民票分割 介護費が月3〜4万円減

 親を介護するにも、先立つものはお金。介護や医療の利用者負担が増えるなか、少しでも負担を減らそうと、親と子で「世帯分離」をする事例が出てきました。分離といっても、同じ住所のまま、住民票を別にして、親世帯の所得を低くする方法です。(寺田理恵)

 東京都の山田孝子さん(55)=仮名=夫婦が払う義母の富子さん(85)=同=の介護費用は、世帯分離で月額3万〜4万円も減った。

 「介護には本当にお金がかかります。義母の年金は月2万7000円だけ。主人は7人兄弟ですが、義母の介護や医療にかかるお金は、私たち夫婦が払っているので、少しでも安く済めば助かります」と山田さん。

 富子さんは山田さん夫婦と同居していたが、現在は自宅近くの特別養護老人ホームに入所している。減ったといっても、負担は月に約7万円かかる。

 山田さん夫婦が払う費用が一気に増えたのは一昨年暮れ、富子さんが心筋梗塞(こうそく)で倒れてからだ。搬送先の病院に35日間入院し、差額ベッド代がかさんだ。

 「救急車の中で病院を探してくれたのですが、1日1万5000円の病室しか空いていないといわれました。命がかかっているときに、払えないなんて、とても言えませんでした」と山田さん。

 退院後、富子さんはリハビリテーションのため、老人保健施設(老健)に移った。老健に入所すると、介護サービスの1割負担のほか、滞在費と食費も払わなければならない。平均的な費用は月7万〜13万円だから、富子さんの年金では足りるはずもない。山田さん夫婦は共働きで、2人合わせた年収は約750万円ほどあるが、想定外の負担は重荷だった。

 ところが、実際の負担はずっと軽かった。利用者負担の滞在費や食費は、所得が低い世帯では軽減される。富子さんは、山田さん夫婦と同居だったが、世帯を分けていたため、軽く済んだのだ。

 山田家が世帯を分けたのは3年半ほど前。目的はもともと、介護費用の軽減ではなかった。世帯は、長男(29)、富子さんが同居する4人家族。富子さんが世帯主だったため、世帯で納付する国民健康保険料が、長男の分も富子さんに請求されていた。そこで、長男が確定申告の際に、保険料を明確にしようと、4人世帯を(1)富子さん(2)山田さん夫婦(3)長男−の3世帯に分離した。その結果、年金の少ない富子さんは、市町村民税の「非課税世帯」になったのだ。

 メリットが分かったのは、老健に入所したとき。さらに、単身世帯で年収150万円以下などの条件を満たし、「生計困難者」として、介護サービスの1割負担分も軽減されると知った。

 富子さんは老健を半年で退所し、在宅で介護を受けていたが、昨年10月に転倒して入院。要介護度が2から4になった。在宅での暮らしも難しくなり、特養に入所した。特養でも、老健と同様に、利用者負担は軽減された。「世帯分離をしていなければ、10万円以上かかったはず」と山田さんは話す。

 「私たちもいずれ、介護が必要になるかもしれない。子供に負担をかけたくないから、お金を使い果たすわけにはいきません。お金の工面に悩むより、少しでも負担を抑えた方が、義母に優しく接することができます。低所得とか生計困難とか見られるかもしれないけれど、家計のことを考えたら、見えなんか気にしていられません」と山田さん。

 山田さんのように、同じ住所で世帯を複数に分けることを「世帯分離」と呼ぶ。年金の少ない高齢者を、子世代と分離することで、利用者負担が軽くなるケースがある。

 例えば、特別養護老人ホームや老健、介護療養型医療施設の介護保険3施設では、居住費(滞在費)や食費などの利用者負担は、世帯の課税状況に応じて決まる。世帯全員が市町村民税非課税だと、負担が軽減される仕組みだ。

 介護保険の自己負担(1割)が高い場合に、頭打ちにする「高額介護サービス費」でも、世帯全員が非課税なら、上限額は低く抑えられる。

 世帯構成や収入によっては、分離すれば、国民健康保険料や介護保険料が下がるケースもある。

 「世帯分離」は一般には、あまり知られていない方法だった。しかし、平成17年10月に介護保険3施設の居住費や食費が利用者負担になるなど、要介護者を抱える家族の負担が増えるなか、注目を集めている。

                   ◇

【用語解説】老人保健施設

 入院治療の必要はないが、リハビリテーションなどの医療ケアを必要とする要介護者が入る介護保険施設。“終(つい)のすみか”となる特別養護老人ホームと違い、在宅に戻ることを前提とするため、入所期間は通常3カ月から半年だが、長期化の傾向がある。

(2007/06/04)

 

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