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年金 年金を取り戻せるか(下)

「宙に浮いていた」山野(旧姓・田島)弘江さん=いずれも仮名=の厚生年金記録。昭和43年6月に加入し、45年3月に脱退したことが分かる。調査で判明し、基礎年金番号に加えられた



 ■記録照会、積極的に 放ったらかしダメ

 「宙に浮いた年金」のうち、比較的見つけやすいのが厚生年金の記録です。若いころに勤めていた女性などでは、当時の加入記録がスッポリ抜け落ちているケースも多いようです。このほか、受給権が得られるのに、気付かずにムダになっている年金記録もあるといいます。最終回は「自分の年金を自分で守る」ために、注意すべきポイントをまとめました。(中川真)

 「せっかくですから、奥さんの年金も調べてみましょうよ」

 埼玉県に住む専業主婦の山野(旧姓・田島)弘江さん(57)=いずれも仮名=は昨年9月、自営業の夫(60)の年金相談をしたときに、社会保険労務士の木村光一さんに勧められ、自分の経歴を話した。年金チェックの第一歩は、経歴をしっかり確認することだ。

 山野さんは昭和24年9月、石川県生まれ。高校卒業後に地元の小売店に就職し、45年3月に退職した。しばらく実家で花嫁修業をした後、22歳になる直前の翌年8月、埼玉県に嫁いできた。その後、会社勤めはしていないという。

 山野さんの国民年金手帳を見ると、小売店退職直後、当時住んでいた石川県の町役場で国民年金に加入。転居や結婚の際に、きちんと届け出ていたことがわかる。

 ところが、山野さんは当時の「厚生年金証書」を保管していなかった。退職時に勤め先から返してもらった証書をなくしたのか、もらわずに退職してしまったのか、分からないという。

 木村社労士は最寄りの社会保険事務所で、山野さんの「被保険者記録」を照会したが、厚生年金に入っていた記録は記載されていなかった。

 そこで、担当者に(1)山野さんの当時の住所(2)勤務先(3)勤務していた時期−を伝えたところ、すぐに旧姓の厚生年金加入記録が判明。その場で基礎年金番号に加えられた。

 山野さんの場合、平成9年に基礎年金番号が導入された際、旧姓の厚生年金番号が統合されず、「宙に浮いて」しまったのだ。基礎年金番号は「氏名」「性別」「生年月日」で構成されているので、結婚で姓が変わったことが原因とみられる。

 「あら、あったの。よかったわ」。報告を聞いた山野さんは、しばらく信じられない様子だった。木村さんは「将来の受給見込み額は年額3万3000円程度、増えただけですが、これで介護保険料を払えると考えれば、結構大きいですよ」と話す。

 手元に戻った山野さんの厚生年金は、5000万件超といわれる「宙に浮いた年金」の典型的なケースだ。消えたわけではないが、放置しておいたら戻って来るとは限らないのだ。

                   ◇

 木村さんは今回の年金記録紛失問題について、「国会中継などを見ていると、やや大騒ぎしすぎの面もあると思う。『消えた年金』は全体の一部で、とりわけ厚生年金は少し調べれば出てくるケースが多いですから」と指摘する。

 特に、女性は加入記録のチェックが大事だ。結婚で姓が変わったり、国民年金の第3号被保険者になったり、パートや派遣なども含め、転職経験があるケースが多いからだ。経歴が多いほど、加入した年金番号も増える。終身雇用型のサラリーマンよりも、年金の一部が宙に浮いたり、消える可能性ははるかに高い。

 ただし、1つの会社に長く勤めたサラリーマンでも、危険はある。木村さんによると、支店や工場などの拠点ごとに、届け出先の社会保険事務所が違う会社で、転勤時に人事担当者がデータを送り忘れ、転勤前の厚生年金の加入記録が消えてしまったケースもあったという。

 木村さんは、山野さんのかつての勤務先で在職記録を確認し、消えた年金を“復活”させた。こうしたケースでは、社労士に調査を依頼する必要もありそうだ。

 このほか、加入期間が足りず、年金をあきらめている人も注意が必要。年金を受け取るには25年の加入期間が必要だが、自身が加入していたことを忘れている人も多い。

 例えば、10代で就職して厚生年金に5年間加入したが、退職後に国民年金に加入せず、将来の受給をあきらめているようなケース。過去の記録を把握できれば、年齢によっては今から国民年金に入っても間に合う。

 また、昭和16年4月1日以前に生まれた人は、退職の際に厚生年金を「脱退一時金」として受けている場合がある。脱退一時金で処理された納付記録は、もはや年金額には反映しないが、加入期間としてはカウントされる。国民年金の加入期間が足りないと思っている人は、要チェックだ。

 加入記録紛失問題で国民の信頼を失った年金制度。「自分の年金は自分で守る」という姿勢が一層、重要になっている。

(2007/06/20)

 

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