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年金 年金問題広がる波紋(中)厚生年金基金の未請求

木村社労士が担当した女性の回答票。手前左の「123489種」は「基金に加入しない男性、女性、坑内員、任意継続、船員のいずれか」を示し、右の「567種」は「基金に加入する男性、女性、坑内員のいずれか」を意味する



 ■社保庁データと別管理

 基礎(国民)年金、厚生年金に上乗せする「3階部分」の厚生年金基金で、もらい忘れが1544億円(124万人分)もあることが発覚しました。加入していた人が転職後に住所を届け出ず、請求書などが届かないまま、「未請求」になるケースが多いようです。こうした現状を知りながら、長年放置した企業年金連合会(東京都港区)の責任は重大ですが、自分の年金を自分で守るため、加入記録などのチェックが一層大事になっています。(中川真)

 先月末、長年勤めた大手企業を定年退職し、悠々自適の生活に入った千葉市の野田光太郎さん(60)=仮名。

 ところが、昨年夏に社会保険庁から届いた通知を見たときは、びっくり仰天した。初年度の厚生年金は支給額が「月7万円」に満たないという。「うーん、会社の先輩たちから『月25万円近くもらえるよ』と聞いていたのに…」

 野田家はここ数年、住宅ローン返済を重視したマネーライフだったため、貯金額はあまり多くないという。野田さんは給与水準が高かっただけに、退職後の年金がどうなるか心配だった。

 「これじゃあ、やっていけない」

 野田さんは慌てて、近くの社会保険事務所に駆け込んだ。その結果、勤務先には厚生年金基金があり、基金が厚生年金の一部も代行して管理していることがわかった。

 後日、会社が主催した定年退職予定者の説明会で、野田さんも基金分を合わせれば、先輩たちと同水準の厚生年金(基金も含む)をもらえることが分かったという。

 「社保庁のはがきに基金のこともちゃんと書いてあれば、慌てることはなかったのに」と、野田さんは振り返る。

                   ◇

 だが、本当に深刻なのは、発覚した124万人のように、基金のある会社を中途退職し、自分が基金に入っていたことを知らないまま60歳を迎えてしまった人だ。

 社会保険労務士の木村光一さんは最近、顧問先の中小企業で、社員向けの年金相談会を開いた。木村さんは、社会保険事務所の職員らが操作する端末画面を印字した「制度共通年金見込額照会回答票」を取り寄せ、一緒にチェックした。職員らが「ハードコピー」と呼ぶ紙だ。

 「おっ、厚生年金基金もありますね」

 「え、何ですか?」

 相談者の1人、52歳の女性は回答票を見ながら、キョトンとしている。

 女性は19歳で大手企業に就職し、7年後に結婚退職。その後、地元の中堅企業で約1年働いた。

 回答票によると、60歳の段階でもらえる厚生年金の見込み額(報酬比例部分のみ)は11万400円。このほか、「567種38月」の記載から、厚生年金基金に3年2カ月加入していたことが読み取れる。「○種」の数字には、表のような意味があるが、これだけでは、普通の人には基金があると分からないのが実情だ。

 社保庁は被保険者などに、「企業名や基金加入の実績がはっきり書かれたデータを渡したり、コード番号(種別)の読み方を説明した一覧表を渡している」と説明する。しかし、木村氏ら複数の社労士らは「確かに最近少し良くなったが、相談者が求めないと、詳しい説明をしない職員が多い。『内部資料を見せてやる』という姿勢だからだろう」と口をそろえる。

                   ◇

 この女性のように、中途退職すると、その会社の基金から脱退し、通常は基金と縁が切れる。そこで、短期間(通常10年未満)で脱退した人の企業年金(厚生年金基金など)を通算したり、支給の事務をしているのが、企業年金連合会だ。

 連合会によると、中途脱退者には直後に案内を送り、転居時の通知や、60歳になったときの請求を求めているという。60歳を控えた人には、請求書も送るが、転居の連絡がないと、“所在不明”になってしまう。

 20歳以上の全国民に加入義務がある公的年金と違い、企業年金の対象は一部のサラリーマン。社保庁とデータを一括管理していないため、こういうことが起こる。社保庁の記録では、企業年金に加入していた期間は分かるが、受給見込み額などは分からない。

 連合会は、社保庁から厚生年金を請求した人のリストをもらい、基金の請求のない人を割り出し、改めて請求書を送っている。だが、現在受給している276万人の半数にあたる124万人がもらい忘れのままだ。

 連合会は広告や相談ダイヤル(フリーダイヤル0120・458・865)で問い合わせを呼びかけている。ただ、短期脱退者の多くは基金の加入歴そのものを自覚していない。公的年金と同時請求できるようにするなど、抜本的な見直しが必要だろう。

(2007/09/25)

 

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