産経新聞社

ゆうゆうLife

書評 「ほどほど」がだいじ がんから5年 

 「向き合って」でも取り上げたエッセイスト、岸本葉子さんによる、“がん体験”のその後。治療の3年後から5年半までに出会ったがん患者らとの交流を通じ、自身の心の軌跡を描く。

 検査のたびに、「また命がのびた」と胸をなで下ろす日々が続いたが、5年たって、主治医に「治りました」と告げられる。毎月のように通った病院に一抹の思いは残しながら、がん体験が特別なことではなく、筆者にとって日常の風景となりつつあることを記す。

 エッセーのほか、精神科医の香山リカ氏らと女の生き方を論じた座談会も収録。「なるべく普通に」と心がけてきた通り、がん体験者以外にも読みやすい内容となっている。(文芸春秋、1800円)

(2007/10/09)