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子育て支援 知恵絞る官民(上)出生率改善へ手探り


 子育て家庭の経済的負担を軽くしようと、多くの自治体がさまざまな支援策を打ち出しています。乳幼児などへの医療費助成は全都道府県が導入。独自に児童手当を支給する市町村も。出生率が下がる中、自治体は子育て支援に、知恵を絞ります。(横内孝)

 京都府中部の丹波地方。人口約4万人の南丹(なんたん)市では、高校卒業まで入院や外来の医療費がいくらかかっても、1医療機関につき、月に200円で済む。

 南丹市は平成18年、4町合併で誕生した。旧園部町は7年前、旧八木町は4年ほど前に同様の制度を開始。合併を機に、高い水準に合わせた。南丹市の担当者は「医療費の負担感が強い若い子育て世代を、社会全体で支えたい」とする。

 府も今年9月、4年ぶりに子育て支援医療費助成制度を拡充。自己負担を、小学校卒業まで入院は1医療機関につき、月に200円。外来は3歳未満が同、月200円。3歳以上、小学校就学前までは医療機関数によらず、月3000円とした。

 医療機関の窓口負担は本来、3歳未満が2割、3歳以上では3割。しかし、全国保険医団体連合会(東京都渋谷区)によると、全都道府県が乳幼児への医療費助成を実施している。助成内容は子供の年齢、一部負担金の有無、親の所得制限など、自治体によってまちまち。

 だが、高校卒業まで対象にするのは、全国でも南丹市だけという。

 京都府では、府の制度に上乗せする自治体が、26市町村のうち23市町村に上る。どこに住むかで、負担に格差が生じる格好。ある自治体の担当者は「少子化や過疎化で人口減少が深刻な自治体ほど、手厚い中身になっている」と指摘する。

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 「えっ、児童手当がまたもらえるの?うれしい」

 東京都中央区佃の都営住宅に住む契約社員、山内美恵さん(45)=仮名=は、同区が児童手当を中学卒業まで延長させると聞いて、声を弾ませた。

 山内さんは共働きで、14歳を筆頭に3人の娘がいる。小学生の11歳と8歳の娘は、国の児童手当の対象。しかし、長女にはしばらく、手当がなかった。区の児童手当は月5000円(第3子以降は1万円)。申請すれば年3回、4カ月分ずつ、指定の口座に振り込まれる。「月5000円でも、4カ月分まとまると、結構な額になるので本当に助かっています」

 合計特殊出生率が1を切る千代田、新宿、品川の都心3区も独自の児童手当制度がある。支給基準はまちまちで、中央区と新宿区は国同様、所得制限があるが、千代田区、品川区には所得制限がない。

 千代田区の施策は群を抜く。「次世代教育育成手当」として、高校生まで国の児童手当と同額を支給。児童手当が支給されない小学生にも、育成手当5000円(第3子以降は1万円)を給付する。妊娠5カ月以降の人に月5000円の誕生準備手当もある。

 区教育委員会の関成雄こども支援課長は「都心という土地柄、生活費がかさむ。経済的支援の必要性が高い」と話す。

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 厚生労働省所管の「こども未来財団」が15年度、子供がいない未婚の男女に子育ての不安を調査したところ、「経済的負担が重い」が63・5%(複数回答)で最も多かった。

 財政難の自治体が「ばらまき」とも見える支援策を打ち出す背景には、それらが「出生率改善の一助になる」(斉藤一郎・栃木県こども政策課長)との判断があるからだ。中央区の平林治樹子育て支援課長も「これからの住民は、住まいを選ぶときに、行政サービスを比較するようになる」という。

 施策が少子化に有効かどうかははっきりしない。しかし、出生率の低い都心区や、住民の年齢バランスが崩れている地域では、少子化対策は緊急の課題。だれもが生み育てやすい環境を目指し、自治体の手探りが続いている。

(2007/10/22)