産経新聞社

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社会保障これから 入院中に在宅療養の計画を

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 高齢者が退院する際、病院は、患者が自宅で必要とする福祉サービスなどについて書面を作ったり、説明したりすることが法律で推奨されている。病院にソーシャルワーカーがいれば、その提言も盛り込まれる。

 ただ、本人や家族がどういう生活を送りたいかは、事前に決めておいた方がいいだろう。病院側の説明などが希望通りでなければ、市町村の「地域包括支援センター」に相談するか、自力で退院後の段取りをすることが必要になる。できれば、入院時から書面を作ってくれる病院を選ぶのが望ましい。こうした書面作成の有無を、病院が情報公開しなければならない項目に入れることも検討課題だ。

 入院前に介護保険の要介護認定を受けていた人は、以前のケアマネジャーと相談する。病院側にも介護保険のケアマネに連絡する義務を課し、退院後の計画を介護関係者も含めて考える必要がある。

 自宅で療養する際に重要なのが、必要なときにいつでも対応してくれる医師の存在だ。昨年から、新たに「在宅療養支援診療所」が、この役割を担ってくれるようになった。在宅療養支援診療所は、自宅で療養する患者の急変に備えて、あらかじめ(1)24時間、連絡の取れる連絡先(2)往診する医師の名前(3)訪問看護師の名前−などを、患者宅に文書で提供することが求められている。

 在宅療養支援診療所の情報は、自治体が医療機関を案内するサービスなどで出し始めている。ただ、看板を掲げているものの、実際に24時間対応できる所は多くない、との声もある。行政も正確な情報を蓄積し、情報提供を充実させていくべきだろう。

 在宅療養のもう一つの課題は、夜間の介護対応だ。昨年、「夜間対応型訪問介護」のサービスが導入された。ヘルパーが夜間の定時に高齢者宅を巡回して見回り、特に何かあれば、緊急対応もしてくれる。

 しかし、実施している市町村はまだ多くない。単身の高齢者世帯や夜間介護が負担な家族にとって、今後ますます必要になると考えられるから、普及を応援したい。

 ただ、夜間に他人であるヘルパーが家に入ってくることに、抵抗を感じる利用者もいるかもしれない。事業者やヘルパーの信頼確保のための制度や保険の検討も必要だろう。(立教大学講師 磯部文雄)

(2007/11/29)