産経新聞社

ゆうゆうLife

社会保障これから 災害拠点病院の確認

 明日で阪神淡路大震災から13年目。犠牲者のご冥福を祈りつつ、震災時の医療について考えたい。

 阪神淡路大震災の後、今後の大都市での震災に備えて、災害医療体制の整備が図られてきた。それを前提に、被災時の対応を考えてみたい。

 まず、わが国は縦にも横にも長いので、無事な医療機関は必ずある。阪神淡路の例では、神戸市の長田区で震災にあった場合、東は重大被災地がずっと続くが、北と西は、比較的近くに無事な病院があった。

 災害時に医療機関が機能しているかどうかは、「広域災害救急医療情報システム」に蓄積される。被災地の病院は、診療できる状態であるかどうかを発信することになっており、情報が医療機関などで共有される。支援を必要としている病院や搬送先を把握するためだ。

 災害時には救急車がなかなか来ない可能性も高い。阪神淡路の事後調査では、震災当日に医療機関に来た人の内訳は、担架と自力歩行が34%、救急車が21%、自家用車が10%、不明32%だった。

 担架でなら、近くの病院に運ぶ。災害時の自家用車使用は、厳に慎むべきだが、自力で運び込む場合には、近くの、できれば災害拠点病院(例えば、都内には67カ所ある)に行く。いざというときに備えて、自宅や職場などから一番近い、災害拠点病院がどこかを調べておくことは有効だろう。

 仮に運び込んだ病院が機能不全に陥っていても、機能している病院に搬送してもらえる可能性が高まる。一定規模以上の病院なら、一般に、重傷者を選別し、優先的に治療、あるいは搬送する「トリアージ」を行う医師がいるし、仮にいなくても、こうした病院などには、全国から災害医療チーム(DMAT)が駆けつけることになっているからだ。

 病院間の搬送は救急車で、また災害拠点病院は、ヘリも発着できるよう整備されてきており、域外への搬送には、ヘリコプター活用も考えられている。(立教大学講師 磯部文雄)

(2008/01/16)