産経新聞社

ゆうゆうLife

社会保障これから 特養を効率的に使うには

(写真はイメージです)


 要介護の高齢者が自宅で暮らせない場合、どういう選択肢があるだろう。

 介護が必要な人の入る施設として、第一に挙がるのが、特別養護老人ホームだ。全国に約5700カ所ある。

 「入所者の70%以上を平成26年度までに、要介護度4と5の人にする」というのが、国の指針だ。入所者の要介護度の平均は現在、3・8。要介護度3以下の人も35%程度入っているからだ。

 要介護度の低い人が入っている背景には(1)介護保険施行前に入った軽い入所者を、経過的に認めている(2)重度者ばかりでは、人繰りなど、運営に不安がある−などがある。

 しかし、できるだけ早く、重度者の入所率100%を目指すべきだろう。介護保険施設は、介護の必要性に応じて使われるべきで、要介護度3以下の人に「家族がいない」とか「自宅がない」などの理由で入所させる、いわゆる住宅福祉の肩代わりをさせるのは、適当ではないからだ。

 ただ、要介護度は低いが、認知症で動き回り、介護が大変という人もいる。こういう人については、要介護認定の考え方自体を見直す必要があろう。入所者が重度者ばかりになれば、スタッフが今より多く必要になるとの指摘もあるから、その検討も必要だ。

 介護保険施設は、地域による整備率の差が著しい。住民の平均年齢や平均要介護度も違う。重度の要介護者ばかりで満床にならない地域では、都道府県知事が市町村を超えて、重度者を余裕のある施設に、優先入所させる仕組みも必要だろう。

 昨年、この面で紹介されたように、要介護度3以下の入所者が多い地域もある。しかし、介護費用の7割近くは現在、国や医療保険者など、市町村以外の拠出で賄われている。本来なら、もっと施設介護の必要性が高い地域に回すべき費用を使ってしまっているとも言え、是正されるべきだろう。そのためには、都道府県や国の監査で入所者の調整をする、などの検討も必要かもしれない。(立教大学講師 磯部文雄)

(2008/01/23)