産経新聞社

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社会保障これから 施設整備は首長判断

(写真はイメージです)


 介護保険が適用になる施設にはどんなものがあり、誰が造ることを決めるのだろうか。最近、新しい施設も増えてきたので、整理してみよう。

 まず、特別養護老人ホーム(特養)の場合、30人以上を収容する大型施設は、都道府県知事が指定する。30人未満の小さな「地域密着型特養」は、市町村長あるいは、東京都の区長が指定する。

 特養を増やせば、一般に介護給付費は上がり、介護保険料も高くなる。だから、大きな施設については、都道府県知事の考え方が反映される。小さな規模のものについては原則、市区町村民だけが利用することから、市区町村が判断できるようになっている。

 「施設が足りないから、介護保険料が上がっても施設を造ろう」という判断をするか、「施設は少なくていいから、介護保険料を上げない」という判断をするかは、都道府県や市区町村に任されているわけだ。

 都道府県知事が指定する施設には、ほかに老人保健施設、一定の水準を満たした有料老人ホームなどの大規模特定施設がある。これに、「外部サービス利用型」といって、例えば、診療所を併設する高齢者専用賃貸住宅で、施設外の介護サービスを利用するタイプのものも、一昨年から加わった。職員が見守りや生活相談などを行う点で一般的な集合住宅とは異なる。

 市区町村長は、30人未満の特養だけでなく、30人未満の有料老人ホームやグループホームなども指定できる。

 施設の供給量は、国の「基本的な指針」に基づいて、都道府県が介護保険事業の「支援計画」を示し、市区町村が「事業計画」を作って決める。だから、都道府県知事や市区町村長は必要量を超えていると判断すれば、介護保険施設の指定を拒否することもできる。

 療養病床の再編で、こうした施設の必要性が高まっている。施設の転換や新設を認めるかどうかの判断は、市区町村民が選挙で選ぶ知事や市区町村長の判断に委ねられている。(立教大学講師 磯部文雄)

(2008/01/30)