産経新聞社

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社会保障これから 特養などの整備費はどこへ

(写真はイメージです)


 特別養護老人ホームや老人保健施設など、都道府県が整備する施設の財源は今や100%、都道府県が持っている。

 平成17年に三位一体改革で地方自治の推進が決まったためだ。高齢者施設を造る補助などの財源は、国から各都道府県に移された。その結果、例えば東京都の場合、法人事業税の見直しなどによる減収影響を差し引いても、2000億円以上の増収があったはずだ。

 それなのに、東京都は19年度予算で特別養護老人ホームの整備費を減らしている。

 しかし、東京都の特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養病床の介護保険3施設の高齢者人口比は17年に全国最低なのである。全国平均は高齢者100人に対して3・2床なのに対して、低い方から、東京都(2・2床)、埼玉県(2・5床)、神奈川県(2・6床)、千葉県(2・6床)が続く。

 しかも、今後20年間、65歳以上の高齢者人口は大きく伸びる。東京は233万人が343万人に増え、47%増。埼玉は116万人から201万人で73%増、神奈川が149万人から243万人で63%増、千葉が106万人から178万人で68%増で、他の道府県に比べても著しく高い。

 東京23区の施設整備率は特に低い。「土地が高いから仕方がない」との声もあるが、高い固定資産税や高い法人課税の税収もあることを考えると、一概に土地が高いことを理由にできるのだろうか。

 もちろん、「施設整備は抑制し、在宅サービスを充実させる」という政策もあるだろう。それなら、例えば、24時間の往診に応じる「在宅療養支援診療所」や、深夜の緊急介護に対応する「夜間対応型訪問介護」の促進策を計上するような予算措置があってもいい。

 それとも、有料老人ホームなどの特定施設を増やす方策なのだろうか。それならば、入居者の所得などに応じて一時金を軽減したり、万一の場合に有料老人ホームの倒産リスクを住民に回さないよう、十分な監査などが求められる。

 国から補助が移った後、それがどう使われたか、都道府県の議会、有権者はぜひ、注視してほしい。(立教大学講師 磯部文雄)

(2008/02/06)