産経新聞社

ゆうゆうLife

社会保障これから 認知症への備え

 介護で最も大変なことの一つが認知症への対応だ。要支援・要介護認定者の2人に1人くらいが認知症だから、加齢で起こりやすいと認識することが必要だ。

 発症のきっかけを作らない配慮も必要だろう。「1人暮らしがおぼつかなくなった郷里の父母を引き取ったら、認知症を発症した」「しばらく入院して帰ってきたら、認知症がひどくなった」という話は多い。手術の際の麻酔も相当期間、高齢者の精神に混乱を生じさせることがある。

 物忘れとの違いは(1)現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなどの見当識がなくなる(2)一部でなく、全部を忘れる(夕食のおかずでなく、夕食そのものを忘れる)−などだ。症状が進めば、排泄(はいせつ)を失敗する、引っ込み思案になるなどの問題行動も出てくる。

 大切なのは、早期の受診・発見だ。認知症は脳機能に障害が起こった状態。原因が脳腫瘍(しゅよう)など機能的なら、手術が可能だし、ホルモン異常なら内科的治療で回復する。アルツハイマー型や脳血管性なら進行を遅らせる薬も出ている。

 受診の際は専門医を探したい。病気として比較的新しい分野なので、どの医師でも診断できるわけではないのが現状だ。具体的には電話帳やインターネットで「物忘れ外来」などを調べるか、自治体や地域包括支援センターに認知症研修を終了した医師名を聞く。

 進行が避けられない場合も多い。介護者には、本人が何も分からないわけではなく苦しんでいることを理解し、安心できる環境をつくることなどが求められる。

 地域の連携も必要。「認知症サポーター100万人キャラバン運動」は、認知症を多くの人に理解してもらい、地域で患者や家族を支えようとの試みだ。地域に理解があれば、介護者も人目を気にせず高齢者を連れ歩けるし、徘徊(はいかい)が起きても見つけてもらえる。

 介護者の悩み相談などには、国際長寿センターの介護支え合い相談((電)0120・070・608)や社団法人「認知症の人と家族の会」((電)0120・294・456)などが応じている(いずれも平日10〜15時)。

(立教大学講師 磯部文雄)

(2008/02/13)