産経新聞社

ゆうゆうLife

社会保障これから 年金の歴史的経過

(写真はイメージです)


 少子化で最も影響を受けるのが、年金と考えられている。平成16年の年金改正では、保険料の上限が定められ、29年に厚生年金で18・3%、国民年金では1万6900円より上がらないことになった。

 若い世代にすれば、負担は重いが、年金を将来受給できなくなるとの不安があるようだ。しかし、若年世代の負担は本当に重いのだろうか。18・3%(本人負担は半分)は欧州諸国の水準と比較すれば、高い方ではない。

 若年層が確実に受給できるかという点では、政府は強制加入である以上、保険料の強制徴収や国庫負担を上げてでも年金額を担保できる。逆に、そうしない政府なら、投票行動で変えることができる。

 基礎年金を税金で賄うという案が出ているが、なぜ昭和36年の皆年金発足時や基礎年金発足時に、そうした案が取られなかったのだろうか。

 税で給付される生活保障というのは、いわば生活保護と同じである。60歳(当時)から基礎的な生活部分を賄う年金が、税で給付されれば、「個人の努力で生活設計をする」という自由主義経済の考え方にそぐわない。「保険料を納めた人が退職後も給付を受けられる」というのが、国情に合うと考えられたのだろう。

 線引きの問題もあろう。生活保障が、59歳までは資力調査のある生活保護で行われ、60歳からは一律に資力調査なしで税方式の年金が出るのもバランスに欠ける。平等取り扱いの憲法上の問題もあるだろう。

 イギリスで1908年に老齢年金が始まったときは、税金が原資で、給付は所得制限付きだった。その後、均一拠出、均一給付になり、今の被用者は所得比例の保険料になっている。やはり、「所得調査なしで年金を」という考え方だ。

 フランスは当初から保険料方式を取っている。国民は若いうちに働いて将来に備える社会的義務がある、と考えられていたようだ。

 直近の国際比較はないが、日本では土地など、不動産の価値が異常に高い。多くの土地や資産のある資産家にも、資力調査なく年金を給付することは合意を得られるのだろうか。税方式の年金を導入すれば、きっと所得制限に加え資産制限が取り入れられるだろう。

(立教大学講師 磯部文雄)

(2008/03/05)