産経新聞社

ゆうゆうLife

編集部から すてきなカールくん

 お年寄りをベッドからトイレに移すのに役立つ移乗介護機「カールくん」。「品川区バリアフリー住まい館」で試乗したら、きゃしゃな女性の手動操作でかるーく抱え上げられた。室内バイクよりコンパクトだが、てこの原理を応用し、「介護者の体重の1・6倍まで大丈夫」というから、すごい。

 ベッドから起こす動作は腰に負担がかかる。老老介護では難しいし、腰痛は訪問ヘルパーの職業病だ。こうした道具を活用すれば負担が軽減でき、「下の世話になりたくない」と望むお年寄りの気持ちにも沿うはず。

 ところが、発売元によると、販売台数はわずか300台。介護保険の福祉用具レンタル適用なのに、「PRが足りず、ケアマネジャーもご存じない」。レンタル事業者にとっては、使い方の説明が必要な「手間のかかる商品」なのも普及を阻む。

 八戸大学の篠崎良勝専任講師は「介護保険では、まず訪問ヘルパーを考えるなどマンパワーに頼りがち」とする。福祉用具の種類は知られておらず、一般にはポータブルトイレの印象が強い。ある自治体職員は「退院時に一律に購入を勧められるが、使わないままの家庭が多い」とこぼす。要介護者をベッドから移す手段がなければ、せっかくのトイレも無駄になる。

 「安易な利用」を理由に、法改正で一部のレンタルが打ち切られた経緯もあるが、福祉用具を適切に利用すれば、介護負担は軽減できる。介護の人手不足が深刻化するなか、福祉用具の活用で省力化を図るべきではないか。(寺田理恵)

(2008/03/21)