産経新聞社

ゆうゆうLife

年金で海外暮らし 楽園と呼べる場所を探して

タイ北部チェンマイにあるステープ山の寺で


 私は今、タイの古都、チェンマイに住んでいる。マッサージに通い、美容院で顔や手足のつめを手入れし、昼食はホテルやカフェ、日本食レストランで取り、気が向けば自分で料理も作る。毎月の生活費は、年金と同額のおよそ16万円。気ままなひとり暮らしである。

 物価が安くて温暖で、治安のいい海外のリゾート地で退職後を過ごす人が増えてきた。ここチェンマイに住む日本人の数も数年前に比べ、倍以上に増えたという。物価も税金も上がる一方の日本では、安心して暮らせない。将来が不安な年金を有効に使うには、物価の安い海外に住んだらどうだろうと考えた人々である。

 年金や預金をベースに悠々自適の暮らしができないだろうか。世界のどこかに、楽園と呼べる場所がきっとある。そんな子供のころからの夢を膨らませ、会社を早期退職して、青い鳥探しの旅に出たのは、もう9年前のこと。出張も含め、海外には何度も出かけていたが、ここぞと思う場所は見つからず、当時は情報もほとんどなかった。

 退職後は“フーテンのおトラ”と自称し、ハワイをはじめ、ヨーロッパ、南半球、東南アジアのあちこちに暮らしてみた。オーストラリアのゴールドコーストに、4年間有効のビザを取って住んだこともある。しかし、豪ドルも物価も上がる一方で、20万円に欠ける年金ではとても暮らせない。

 同じ費用があれば、アジアでは、はるかに豊かな暮らしができる。それなら、食べ物がおいしく、物価も安く、人々の笑顔が優しいタイに引っ越そう。こうして昨秋、チェンマイに移ってきた。この街にはおいしい食事や買い物、美容まで、少ないお金で楽しめることがまだまだいっぱいある。

 何より、16万円の年金で節約を考えずに過ごせるのが、うれしい。とはいえ、私の年金では、東京の留守宅にかかる費用までは賄えない。それは、いったいどうしているか。

 ひとり暮らしで大丈夫? 保険や言葉の問題は? 現地で実際にかかる費用は? などなど。海外暮らしを始めるために必要な情報の詳細は次回以降で。

 (旅行作家・立道和子)

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【プロフィル】立道和子

 たてみち・かずこ 昭和18年生まれ。55歳で出版社を早期退職し、海外に“楽園”を求めて旅を重ねる。チェンマイ在住。著書に『とりあえず1カ月 海外リタイア暮らし』(河出書房新社)、『年金月21万円の海外暮らし』シリーズ(文芸春秋)など。

(2008/03/26)