産経新聞社

ゆうゆうLife

年金で海外暮らし 退職後の費用はいくら必要?

タイ人の心のふるさとスコータイにある石仏


 好きなことだけして、いやなことには「ノー」と言い、ビールと推理小説を片手の海外暮らし。会社を辞めたらストレスのない、そんな毎日を過ごしたかった。それには、いったいどれくらいお金がいるのだろうか。50代の私は毎日悩んでいた。

 退職後の費用はどれぐらい必要か。私にそれが用意できるのか? しっかり計算してみなければいけなかった。所属していた雑誌の、家計やお金のページを繰り返し熟読し、やっと老後の人生プランと資金の計算に取りかかった。

 まず、自分の資産と負債を知ることが必要だ。といっても、資産といえるのは、都内にある2LDKのマンションと、少々の預金だけ。ローンは完済し、負債はゼロだった。

 次は退職後に必要な生活費である。55歳で退職し、80歳まで生きると仮定すると、退職後の人生は25年間。55歳から70歳までは、多めに見積もって、月30万円の生活費がかかるものとした。多いと思われるだろうが、実際にかかる費用は2人も1人もそれほど違わない。独り者だから、その分、お金の面ではシビアに考えておきたかった。

 70歳以降は、体力も食欲も衰えるだろうから、月25万円とする。これで、30万円×12カ月×15年=5400万円。25万円×12カ月×10年=3000万円で合計8400万円。病気やけがなど、万一の場合や、自宅の修理やリフォームが必要になったときの費用1500万円を加えると、9900万円。これが80歳まで生きるのに必要な金額ということになる。

 収入は、退職金と年金しかない。後に他の収入も見込めるようになったが、これは計算外のことだったから、ここには入れていない。年金は、55歳から60歳までは早期退職に伴う会社からの勇退年金が月約23万円。23万円×12カ月×5年間=1380万円。60歳から65歳は厚生年金が197万円(月額約16万円)。これが5年間で985万円になる。65歳以降は、ちょっと増えて年額約205万円(月額約17万円)になる。205万円×15年間=3075万円。合計5440万円である。

 老後必要な金額から見込み収入を引くと、4460万円の赤字だった。ただ、多少の退職金があって、最後はマンションを売ればプラスになるだろうと判断した。やっていけるかな? この計算を残業から帰った深夜、何度も何度もやり直した。さらに悩み、預金に励んで、退職後の夢に踏み出した。(旅行作家 立道和子)

(2008/04/02)