産経新聞社

ゆうゆうLife

編集部から 酔っぱらいの救急搬送

 同窓会で酒を飲んで帰宅した知人が、玄関前で昏倒(こんとう)した。近所の人が救急車を呼んだが、救急隊員はただの酔っぱらいとみたのか、引き揚げようとした。「様子がおかしい」と、近所の人が救急隊員を引き留め、救急病院に送らせたら、頭の骨にひびが入っていたという。

 「救急患者はみてみないと分からない」と救急専門医は言う。血まみれで運ばれた子供が軽傷だったり、「気分が悪い」と、歩いて病院に来た人が重度の脳疾患だったり。

 東京都が安易な救急要請を減らそうと始めた救急相談でも、半年間に2000件の救急要請が発生した。患者自身は軽症と思っても、そうでないケースが多かったということだろう。

 そこへ、酔っぱらいという要素がからんだら、さらに判断は難しくなる。病院が嫌がる患者のひとつが“酔客”。大声を上げて暴れ、悪態をついた揚げ句、病院の機材を破壊する者もいると聞く。

 冒頭の知人の例ではないが、救急隊の脳裏に、嫌がる医師の顔が浮かんでも無理はない。判断も難しくなるし、酔っぱらいのけがや昏睡(こんすい)は、それでなくても忙しい救急現場に拍車をかける。

 飲酒は本人の責任が大きい。飲酒で救急車のお世話になることだけは避けたい。酔っぱらいの救急搬送で、命にかかわる患者の救急搬送ができなくなると思えば、酔いもさめようというものだ。自戒を込めて…。(北村理)

(2008/04/04)