産経新聞社

ゆうゆうLife

年金で海外暮らし “楽園”の条件

チェンマイは物価の安さでも優等生。カレーヌードルとミネラルウオーターのランチで約260円


 資金に一応のめどがつき、私は退職。失業給付を受けながら、老後を海外で共に暮らす約束だったイギリス人の相棒と、落ち着く先を探す旅を始めた。これは、と思う街で1、2カ月滞在してみる。そして、そこを本当に私たちの夢の楽園と呼べるかどうか、判断しようと思ったのである。

 中年を過ぎた私たちに、残された時間は限られている。体力と気力があるうちに、海外のどこかに落ち着きたかった。そのためには、手当たり次第の旅はできない。とりあえず、10項目の条件を挙げ、当てはまる“楽園候補地”に住んでみることにした。その10の条件とは次のようなものだった。

 (1)治安のいいところでなければいけない(2)気候が温暖なことも大切だ。年金をベースに暮らすのだから、(3)物価は安くないと困る(4)医療に安心できる場所も大事な条件だ。それに、(5)食べ物のおいしいところであってほしい。日本食が手に入れば、問題はないが。(6)言葉が通じる場所でないと困る。せめて、簡単な英語が通じれば…。(7)人々は親切か。相手が不愉快な態度しか示してくれないようでは、やっぱり居心地がよいとはいえない(8)住環境のよいところ。(9)日本からあまり遠くないところ。がんや脳梗塞(こうそく)など、深刻な病気と分かったら、言葉の通じる母国へ、飛行機で10時間以内に帰れるところだ。(10)長期滞在ビザのあるところ。だって、そこが楽園と分かっても、ビザがなければ長く住むことはできないのだから。

 私たちはこれまで旅行した場所を再チェックし、本や雑誌、新聞やインターネットを探し、各国の観光局に取材して、いくつもの国や街をふるいにかけた。最近は、海外に長期滞在したい人の集まりが全国にたくさんあるので、参加して先輩たちの体験談を聞くのも役立つ。「ロングステイ」や「海外滞在」などのキーワードでインターネットを探すと、連絡先が見つかるはずだ。

 さて、私たちの楽園探しは、バンコクからスタートした。タイにはビザなしで30日間滞在できる。バンコクはおいしいレストランが多く、何度も旅行した好きな街だ。台所つきのサービスアパートを1カ月、インターネットで予約した。食べ、マッサージを受け、毎日、買い物に出かけた。しかし、バンコクは家賃が高い。好きだけれど、決定打ではないね。ふたりの意見は一致した。(旅行作家 立道和子)

(2008/04/09)