産経新聞社

ゆうゆうLife

年金で海外暮らし 病院も保険しだい

ゾウのショーは、チェンマイを訪れる観光客に大人気=チェンマイ郊外


 その人は80歳だった。ゴールドコーストで暮らしていたが、保険にはまったく入っていないという。「海外旅行保険は必要ですよ。そのお年で、もし病気になったらどうするんです?」と忠告したが、そんな余裕はないよと一蹴(いっしゅう)されてしまった。何かあったら、どうするんだろう。人ごとながら私は心配だった。

 一方、こんな友人もいたのである。ゴールドコーストで乗馬ツアーに出かけ、落馬して骨折し、病院に入院することになった。彼は退職後、英会話を学びたいと、留学生ビザを取って渡豪。当然、海外旅行保険に入っていた。病院に運ばれる救急車の中で、まず聞かれたのは保険に入っているかどうか。それは、どんな保険かだった。

 保険にはAとBのランクがあり、それによって搬送先が違うという。たまたま彼の保険はAランクにあたったため、私立病院に運ばれ、個室に入院となった。そこではなんと、昼食にワインが出て、「優雅な入院生活だった」と左党の友人は喜んでいたが、Bランクだと、費用の安い公立病院に連れていかれるとか。

 ゴールドコーストの公立病院は予算不足。病室も医師も足りず、「ひどい」と評判だった。保険に入っていなければ、高い私立病院は望めまい。公立病院でも、かかった費用を全額、自己負担すると大変なことになる。中年以後の海外旅行には旅行保険は必需品と考えたい。

 3カ月以内の海外旅行なら、一般にクレジットカード付帯の旅行保険が利用できる。保障される内容を考えると、一般カードより、ゴールド以上のカードが安心だ。年会費は高いが、別途、保険に入るより得という面もある。一般カードは保障額が低いばかりでなく、旅行費用や航空券をカード決済して初めて保険が付くものが多い。

 ゴールド以上のカードには、海外旅行保険が自動的につくことが多いが、内容は会社によって異なるので、確認しておくことも大切だ。退職して無職になると、上ランクのカードは作れなくなるから、現役時代に作っておくのも準備のうち。

 数カ月以上日本を離れ、海外で暮らす場合は、カード付帯の保険を延長する形で、4カ月目からの旅行保険を契約するのが得策。ただし、カード会社によっては延長が受け入れられず、3カ月以上海外に滞在するには、出発時からカードとは別建ての保険に入る必要があるので、加入前に調べておきたい。(旅行作家 立道和子)

(2008/04/16)