産経新聞社

ゆうゆうLife

編集部から 情報がない不安

 後期高齢者医療制度を取材して感じたのは、住民の強い不満だ。先月、ある自治体で開かれた説明会では質問が相次いだ。「なぜ年金から保険料を天引きするのか。保険料をもれなく取りたいだけではないのか」「特定健診が75歳以上は努力義務というのはなぜか。死んでもいいということか」

 担当者はたびたび「詳細は分からない」「コメントする立場にない」と応じた。揚げ句は「制度を淡々と運営するのが、われわれの務め」。言外に「私たちが決めたことではない」とのニュアンスがこもる。もちろん、参加者は納得できない。「『分からない』って、制度は4月から始まっているんでしょう」「われわれが話を聞けるのはあなたしかいない」と、お年寄りが詰め寄った。

 新制度を寝耳に水と受け止めた人は少なくない。知らなかったことでさらに不満が募る。実際、ある男性は説明会後、「反対ばかりと思われるのもしゃく。要は、情報がないのが不安なのだ」と話した。

 住民には、国も広域連合も市区町村も同じ「行政」。“その役回り”に関心はない。ただ、きちんと説明してほしいのだ。市区町村の担当者も「制度が完璧(かんぺき)とは思っていない」という。新制度は試行錯誤を繰り返し、より良いものを目指すもの。住民の声に耳を傾け、生かせるものは反映させる努力も必要だろう。(横内孝)

(2008/05/02)