産経新聞社

ゆうゆうLife

編集部から 「大阪のおばちゃん」増殖計画

 「みんなシングルです」「どこにでもスカウトして」

 色っぽい声の主は80歳以上のおばあちゃんたち。大阪府豊中市の原田小学校区の福祉拠点「遊友」で開かれるカラオケ教室の参加者だ。夫と死別した未亡人たちだが、驚くほどにぎやか。演歌の歌詞をネタに、つやっぽい発言も飛び出す。

 「大阪のおばちゃんは元気でしょう」と問われ、「私も関西人、奈良出身です」と応じると、「奈良はちょっと違うねえ」とばっさり。初対面でも友達のノリだ。

 遊友では、子育てサロンや主に高齢者対象のサロンも開かれる。運営ボランティアは60〜70歳代女性が中心。閉じこもりがちなお年寄りを誘い出すサクラとして活躍する90代女性もいる。豊中市では、こうした住民同士の支え合いが小学校区ごとに行われている。専門用語では「地域福祉」と呼ばれ、孤独死対策としても注目される。 

 日本福祉大学の平野隆之教授は「地域福祉とは、世話好きな人を評価すること」と解説する。分かりやすくいえば、「どうしたん?」と声をかける“大阪のおばちゃん”の価値を社会が認めることだ。

 実はどこにでもいる“大阪のおばちゃん”や、地域の助け合いを生かすことで、「福祉自給率」は高まる。取材後、遊友関係者に「超高齢社会には、大阪のおばちゃんが必要」と東京から電話したら、「派遣しましょか」とノリが良いのだった。(寺田理恵)

(2008/05/30)