産経新聞社

ゆうゆうLife

年金で海外暮らし 預金はギャンブル?

フードコートに映画館。なんでもありのショッピングセンター


 オーストラリアやハワイでは、パスポートとお金を持参すれば、簡単に銀行口座が開ける。オーストラリアでは、入国後2週間を過ぎるとパスポート以外の書類が必要になるから、口座を開きたければ、2週間以内に手続きをすること。タイは簡単な銀行とそうでない銀行があるばかりか、同じ銀行でも支店によって、口座開設の条件が違うことも。

 チェンマイのショッピングセンター内にあり、夜や休日も開いていて便利なのがバンコク銀行だが、この支店では口座の開設にタイ人の保証人がいる。ところが、ワローロット市場近くの同銀行では、パスポートとお金があれば口座が開けるそうだ。最近は多くの日本人がこの支店に口座を持っているらしい。

 2、3カ月以上滞在するなら、その土地で口座を持つ方が何かと便利なのはいうまでもない。私も大家さんに保証人を頼み、便利な場所に口座を開いた。ここをマイバンクにしておけば、ショッピングや食事のついでに、足りなくなったお金を下ろすことができる。預金は、ビザの取得に必要な80万バーツ(約256万円)から、実際には年金額の約197万円を引いた額を、生活費として預けただけだから、ささやかなものである。

 ちょっとまとまったお金を、預金したのはオーストラリアだった。年金ではお手上げのゴールドコーストの生活費を、利子でなんとか補えないかと虫のいいことを考えたのだ。最初は生活費を預ける程度だったが、銀行の利子が上がってくると、「待てよ」と考えた。たとえば、今年2月に私が更新した1年定期の利子は7・8%。1%に満たない日本の利子とは雲泥の差だ。

 今ではこのおかげで、年金で払いきれない日本国内の健康保険料、マンションの管理・維持費などがまかなえる。豪ドルが高く、利子も高い今はいいが、これが永遠に続くわけはない。もし、豪ドルが下がり、利子も下がったらどうするか。海外での預金は、そこに長く住む覚悟がない限り、ギャンブルのようなものかもしれない。

 おまけに、海外の預金や利子は税務署に申告する必要がある。オーストラリアの場合、居住者の税金は非常に高いが、非居住者は利子から10%が源泉徴収されるだけ。日本の利子課税はその倍の20%だが、海外の利子を税務署に確定申告すると、他の収入との総合課税になる。うまい話はないものだ。(旅行作家 立道和子)

(2008/06/18)