産経新聞社

ゆうゆうLife

年金 年金質問箱 受給資格を満たすには(上)


 ■Q.加入期間が25年に満たないのですが…

 ■A.カラ期間の有無を確認しましょう

 老齢基礎年金(国民年金)を受けるには原則、25年の加入期間が必要。保険料を納めた期間と経済的な事情などで免除を受けた期間の合計で満たすのが基本です。それでも不足なら、“カラ期間”と呼ばれる期間を足す救済措置もあります。しかし、この期間は年金額には反映されません。加入期間が25年に満たない人は、国民年金に任意加入することもできます。年金は生涯受ける老後の支え。簡単にあきらめず、まず、自身の年金記録を確認しましょう。(横内孝)

 「若いとき、声楽の勉強をするため、ウィーンやバルセロナで過ごしました。その期間は年金加入期間として認めてもらえるのでしょうか?」

 東京都の主婦、松下友紀さん(60)=仮名=は60歳を前にした昨年4月、社会保険庁から来たはがきを見て不安になった。はがきには、松下さんの年金加入期間が「251カ月」と記されており、「社会保険庁が管理している加入期間のみでは、年金を受ける必要期間に満たない」旨が記載されていた。年金は原則、25年(300カ月)の加入期間を満たさないと受けられないからだ。

 昭和22年7月生まれの松下さんは大学卒業後、関西の短大で9カ月間、音楽講師を務めた後、声楽の勉強のため26歳で渡欧。その後約9年間、オーストリアやスペインで生活した。帰国後、建築士と結婚して専業主婦になった。

 はがきは、一定の条件下で受給資格期間に算入される「合算対象期間」(カラ期間)にも触れており、海外在住の期間も認められるようだった。不安だった松下さんは約3カ月後、社会保険事務所を訪れた。

 社会保険庁の記録にあったのは、昭和61年4月にサラリーマンの妻が国民年金加入を義務化された以降の第3号被保険者期間の255カ月分だけ。窓口で、結婚は昭和58年で、それ以前は海外暮らしだったことなどを伝えると、「海外在住期間と、61年3月以前に配偶者だった期間、学生時代の分が合算対象期間になります」と言われ、ひと安心した。

 しかし、合算対象期間は受給資格には算入されるが、年金額には反映されない。このため、通称“カラ期間”と呼ばれる。

 担当者は老齢基礎年金の試算額を示しながら、こう助言した。「合算対象期間を使う手もありますが、音楽講師だった時代に納めた共済年金を加えれば、不足するのはあと36カ月分。任意加入すれば要件を満たせますよ」

 ただ、合算対象期間の確認については、「老齢基礎年金の支給が始まる65歳の年金裁定請求時になる」と説明されたという。松下さんは「年金記録漏れの問題もあり、65歳まで待つのは不安です。国民年金の強制加入は60歳まで。その先、任意で加入するかどうかは個人の自由。どうして、60歳時点でカラ期間として裁定してもらえないのでしょうか」と首をひねる。

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 合算対象期間は、無年金者を出さないための救済措置でもある。具体的に認められるのは、表の通りだ。

 ただ、国は加入者ごとの合算対象期間を把握していない。厚生労働省は「年金制度は本来、保険料を納付してもらうのが前提。合算対象期間は、事前に個人の記録として登録しておくものではない」と、理由を説明する。

 これに対して、社会保険労務士の北村庄吾さんは「社会保険庁の記録管理に不信感も高まっており、カラ期間は個人の年金記録に欄を設けて、記録することが望ましい」と指摘する。

 合算対象期間の認定作業は一般に年金裁定時の65歳時。だが、カラ期間かどうか不安な人は、事前に相談するのが望ましい。後になってカラ期間でないと分かっても、取り返しが付かないからだ。

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 年金額に反映しないカラ期間が長ければ、将来受ける年金額は減る。担当者の助言もあり、松下さんは「少しでも年金を増やしたい」と、60歳以降、国民年金に任意加入し、保険料を払い始めた。資格要件は63歳で満たせるが、「65歳まで任意加入するつもりです」という。国民年金は、加入期間が1年延びると、年額約2万円増える。5年間で年金額は約10万円増える計算だ。

 北村さんは「今からでも遅くない。付加年金にも加入し、月400円の付加保険料も合わせて払うといい。65歳まで4年かければ、毎年9600円が加算され、2年間受給すれば、保険料の元が取れる。銀行に預けるよりよっぽどオトクです」とアドバイスしている。

 明日は原則25年という受給資格期間そのものが短縮される特例を紹介する。

(2008/07/03)