産経新聞社

ゆうゆうLife

編集部から “仕事”にいそしむ認知症高齢者

 昭和ひとケタ世代の職員が何人も勤務していると思ったら、認知症のお年寄りだった。

 石川県加賀市の「小規模多機能ホームきょうまち」では、利用者が皆のおかずを作ったり、お盆でお茶を運んだりと、よく働く。動き回れるうちは、世話をされるより落ち着くのかもしれない。レクリエーション中心の一般的なデイサービスとは異なる光景だ。本人たちは「旅館に勤務している」つもりだったりするのだが、それも無理からぬこと。築130年の町屋を再生した建物は、老舗旅館と見まがう立派な造りなのだ。

 小規模多機能型は「地域密着型サービスの1つ」と聞いてもイメージがわかなかったが、街中にあるのが特徴。大規模施設が概して市街地から離れた立地なのと違い、利用者宅に近く、ご近所の目も届く。同市の温泉街にある「小規模多機能ホームききょうが丘」も、もとは個人の茶室付き邸宅だ。

 民家から介護施設へのこうした改修には、国の交付金が出る。日常生活圏域ごとの地域密着型サービス拠点の整備計画、いわば街づくりに交付される。「市町村の裁量が大きく、使いやすい」(加賀市)というが、全国的にはあまり活用されていない。3年経っても、約67%の圏域で計画が未提出。原因は、趣旨が理解されない点にあるようだ。高齢者が自宅に住み続けるにはいい方法と思うが、一言で説明できないのが難点か。(寺田理恵)

(2008/07/04)