産経新聞社

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年金 年金質問箱 パート主婦の加入は


 Q.年収130万円未満でも保険料を天引きされましたが?

 A.常用的雇用関係なら被保険者になります

 「年収114万円なのに保険料を天引きされる」。こんな質問が、読者から寄せられました。パートで働くサラリーマンの妻は年収が130万円未満なら、健康保険や年金の保険料を納めずに済むことが、「年収130万円の壁」として知られています。なぜ、壁に届かないのに、保険料が引かれるのでしょうか。(寺田理恵)

 静岡県の主婦、和田恵美子さん(38)=仮名=の年収は114万円。「130万円に満たないのに、健康保険料や厚生年金保険料は給料から天引きされます。毎月、給与明細をもらうたびに、保険料がなければ手取りが多いのに、と考え込んでしまいます」

 パートとして勤務する和田さんの時給は750円。勤務先が自宅に近いため、交通費は支給されない。1日7時間程度働いても、週4日の勤務で平均月収は9万5000円。ここから、健康保険料と年金保険料の計1万1400円も引かれるのは痛い。「勤務先からは『月の勤務時間が110時間を超えたら、社会保険に加入しなくてはいけないから』と説明されていますが、本当なのでしょうか」と和田さん。

 和田さんのように、サラリーマンの妻がパートで働く場合、一定要件を満たせば、健康保険や年金の保険料を負担せずに済む。健康保険では夫の被扶養者となり、年金でも、第3号被保険者として国民年金(基礎年金)が受けられるためだ。

 この要件としてよく知られるのが、「年収130万円(原則、交通費込み)未満」。これを満たせば、被扶養者とみなされるため、130万円未満に調整して働く主婦が多い。しかし、パート先で被保険者とみなされるかどうかは、年収と関係ない。

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 社会保険労務士の井戸美枝さんは「パート勤務の場合、雇用関係の実態に即して、被保険者となるかどうかの認定がされます。その1つの目安が労働日数と労働時間。いずれも該当するときは『常用的雇用関係がある』として、被保険者になります」と指摘する。

 具体的には、(1)1日または1週間の勤務時間が、一般社員の所定労働時間のおおむね4分の3以上(2)1カ月の勤務日数が、一般社員の所定労働日数のおおむね4分の3以上−のいずれにも該当する場合、パート先の健康保険や厚生年金の被保険者として扱われる。

 和田さんの1日の勤務時間は7時間で、会社が定める社員の労働時間の4分の3超とみられる。勤務日数は月平均18日。パート先が「月110時間」を社会保険加入の目安としていることからすると、月16日以上の勤務で社会保険に加入させているようだ。社員の労働日数は月21日か22日とみられる。

 「4分の3」はあくまで目安で、職務内容なども含め個別に判断される。「一般社員の4分の3が週30時間でも、週29時間働く人を、社会保険に加入させる企業もあります」と井戸さん。企業負担が生じるため、企業の中には、パートを自社の社会保険に加入させないところもあるから、和田さんが働いている会社は良心的かもしれない。

 「時給の高い東京でなら、同じ勤務時間でも、130万円を超えたかもしれません。今の会社でも、勤務時間を短くすれば、保険料を負担せずに済むでしょうが、職場の都合もあるのでできません。仕方ないですね」と和田さん。

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 パートの主婦で、年収が130万円以上になれば、夫の健保の扶養や年金の第3号被保険者から外れる。その場合、パート先で厚生年金や健保に加入できるかどうかで、負担する保険料や将来の年金額は違ってくる。

 年収が130万円以上でも、勤務時間が短く、パート先の社会保険に加入できない場合は、自分で国民健康保険に加入するので、新たに国保料が生じる。年金では、自営業者などと同じ第1号被保険者として月1万4410円の保険料を納付するため、第3号か第1号かで負担の差は大きい。

 一方、和田さんの社会保険はパート先の健康保険と厚生年金保険。年金では第2号被保険者となり、保険料はパート先と折半だ。保険料負担は必要だが、自分の厚生年金を積めるメリットがある。井戸さんは「和田さんの平均標準報酬月額が9万8000円として、基礎年金に上乗せされる厚生年金は、10年働くと約6万9000円。月6000円くらいが、将来の年金額に反映されます」とする。将来の受取額で、納付した年金保険料分は取り返せそうだ。

(2008/07/18)