産経新聞社

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外出したい街づくり 「まちの駅」で空き店舗対策

新鮮な野菜や卵などの直売所「まちの駅」。商店街で買った品物は、地元タクシーが低料金で配送する=熊本市の健軍商店街


 熊本市内中心部の健軍(けんぐん)商店街に、“県内特産品直売所・ふるさとショップ「まちの駅」”と看板を掲げた店がある。昼下がりの、人通りの少ない商店街で、ここだけ人だかりがしている。年配の女性が多い。

 並んでいる商品は地元で取れた生鮮野菜、鶏卵、パン、すし、総菜、みそ、しょうゆ、漬物、大豆類、果物など。甘酒饅頭(まんじゅう)、団子、おにぎり、炊き込み弁当などは主に地元の婦人会がつくる。値段はやや高めだが、商品には生産者名が記され、安全・新鮮と人気がある。

 空き店舗対策でもある。2階は「縁側事業」と称する会議室。当初は熊本県商工会議所青年部連合会が経営していたが、平成19年4月からは元連合会長の個人経営。店員はパート5人。歩いて2、3分のところに整形外科2、内科医院1がある。午前中に通院し、帰りに買い物に立ち寄るお年寄りも多い。

 高齢者が買い物に行って困るのは、トイレのほかに、肝心の買った品物をどう持ち帰るかである。重い、かさばる、冷凍・冷蔵品などは、年寄りでなくても困る。

 「まちの駅」のほぼ向かいには、地元のタクシー会社が「タクシーステーション」を構える。カート(手押し車)が置いてあり、自由に使える。買った品物をここまで運んでくると、冷凍・冷蔵品は保管してくれ、夕方4時にタクシーが何軒かを回りながら自宅まで届けてくれる。1件300円で、うち100円は商店街が補助する。

 タクシーステーションではお茶もふるまわれ、買い物客の休憩室にもなっている。私も「まちの駅」で買った手作りのおにぎりを、ここでお茶のサービスを受けて頂いた。車いすの人などには福祉タクシーを呼んでくれる。タクシーの空車対策にもなっている。

 島根県松江市の松江天神町商店街のバス停には、空き店舗を改装した、マッサージ室付きの待合室「いっぷく亭」がある。いつも老人のボランティアがいて、お茶の接待や話し相手をしてくれる。商店街にはクリニック、精神障害者によるパンや菓子の製造販売店がある。

 お年寄りを街に誘い出す工夫は福祉への目配りで、商店街はその中心になり得る。(早川和男)

(2008/07/23)