産経新聞社

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年金 年金質問箱 ねんきん特別便を受け取ったら(下)


 ■Q.付加年金を受け取っているか分かりません

 ■A.社会保険事務所で確認を

 「付加年金をきちんと受け取っているかどうか分からない」。「ねんきん特別便」を受け取った読者から、付加年金の納付期間が記されていないことに、不安の声が上がっています。社会保険庁は「特別便は年金受給に必要な加入記録の確認が目的のため、付加年金は対象でない」としています。付加保険料は国民年金に上乗せして納めるものですが、両者の納付期間は一致するとは限りません。記載のないことが、かえって不安を呼んでいます。(寺田理恵)

 「付加年金をずっと納めていましたが、『ねんきん特別便』には記載がありません。今もらっている年金額に反映されているのか分からず、社会保険事務所に聞こうにも混雑しているので困っています」

 東京都三鷹市の中内年子さん(79)=仮名=は昭和3年9月生まれ。24年にサラリーマンの夫と結婚後、都内の私立女子校で教壇に立ったが、1年足らずで辞めて専業主婦となった。36年4月に自営業者を対象に国民年金がスタート。当時、主婦に加入義務はなかったが、中内さんは32歳で加入した。

 「少しでも老後のお金を増やすため、保険料を自分で払いに行きました。40歳ごろから60歳まで私立学校の講師として働きましたが、非常勤で共済組合に入れませんでしたから、専業主婦と同じです。付加年金も、普通の年金よりたくさんもらえるというので、400円ぐらいを国民年金保険料に上乗せして納めたものです」と振り返る。

 付加年金とは、国民年金保険料を支払う人が、保険料に月額400円(付加保険料)をプラスして納付すると、年金が基礎年金に上乗せして支払われる制度。増額分は「200円×付加保険料の納付月数」で計算する。45年10月に始まった。

 61年4月に公的年金制度の再編で、サラリーマンの妻が国民年金(基礎年金)に第3号被保険者として強制加入となると、中内さんも第3号に。国民年金保険料を納めずに済むようになったが、付加年金にも入れなくなった。65歳から年金約83万円を受けている。

 中内さんの特別便に記された加入記録は、36年4月から60歳に達するまでの国民年金329カ月。「付加保険料は、制度が始まったときから払っていたと思います。年金額に含まれているでしょうか」と気がかりだ。

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 ■経歴を総点検して

 「ねんきん特別便」に付加年金の記載がないのは、特別便が加入記録の確認を目的としているため。社会保険労務士の井戸美枝さんは「特別便では、標準報酬月額や付加年金の記録などが確認できません。そのため、納付した保険料が反映されているのか、不安を抱く人が少なくありません。付加年金のほか、厚生年金基金の加入期間も、基金が代行をやめたケースでは記載されていません。問題があると思います」と指摘する。

 中内さんの場合、昭和61年4月に第3号被保険者となり、付加保険料を納付できなくなった。しかし、それ以前については、付加年金が老齢基礎年金とあわせて支給されているはずだ。

 中内さんの年金約83万円のうち、大部分は基礎年金。昭和3年9月生まれの中内さんは、国民年金が発足した36年4月に20歳を過ぎているため、基礎年金の加入可能年数は27年間。加入が任意だった間も欠かさず保険料を納めたので、満額の79万2100円を受給できる。

 専業主婦は一般に、基礎年金に振替加算がつく。夫が厚生年金の“家族手当”として受けていた加給年金が、妻が65歳になると妻に振り替えられるものだ。昭和3年9月生まれだと、約22万円だが、中内さんには付いていない。というのは、中内さんの夫は大正9年11月生まれ。年金制度が再編された昭和61年4月以前に年金を受け始めた人には、夫に加給年金が支給され続けるからだ。

 中内さんの年金約83万円と、基礎年金満額との差額は約3万円。厚生年金や共済年金の加入期間がなければ、これが付加年金と考えられそうだ。

 確認したい場合は、「ねんきん特別便専用ダイヤル」に電話をすれば、記録を送ってもらえる。電話の際、本人確認が必要なので、社会保険庁では「ねんきん特別便をお手元にご用意ください」と話している。

 ただ、中内さんの場合、若いときに教員だった期間の記載がなく、加入記録の不明な部分がある。自身の経歴を見直し、ねんきん特別便の回答票に記入して返信する必要がありそうだ。

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【用語解説】加入可能年数

 昭和16年4月1日以前に生まれた人が、満額の老齢基礎年金を受けるのに必要な加入期間。生年月日により、25〜39年。老齢基礎年金は、40年間保険料を納めると、満額(平成20年度79万2100円)が受給でき、40年より短いと、加入期間に応じて減額される。しかし、国民年金が発足した昭和36年4月に20歳以上だった人は60歳までに40年間加入できないため、これが設けられている。

(2008/09/12)