産経新聞社

ゆうゆうLife

編集部から 制度も励まし、育てたい

 「孫を供に、私も死のうかと…」と、女性は絶句した。娘の子が重度の脳性まひで生まれ、女性は一生続く娘の負担を考え、思い詰めたという。

 脳性まひ児をもつ家庭の負担を軽減する制度として、産科医療補償制度がスタートした。本来歓迎すべきだが、病院や診療所、助産所など分娩(ぶんべん)機関や妊婦の反応はイマイチだ。

 理由は、国として補償すべきなのに、保険料を分娩機関が負担するのはなぜか? 補償の対象が限られているのはおかしいのではないか?など。

 こうした疑問に、制度を運営する日本医療機能評価機構は「産科だけでなく、ほかの診療科など、医療全体に補償制度が拡大すれば、国の制度になりうる」「補償対象は今後、拡大を検討する」と答える。

 制度を運営しながら、分娩機関や妊婦さんも交えて制度を作っていこうという方針のようだ。

 ところが、こうした考えが理解されないためか、手続き完了期日の9月末現在、分娩機関の約2割が手続きを完了していない。

 連載で脳性まひの成美さん(11)を取材した。母親は「長所を励まして育てていこうという思いを込めて名付けました」という。同じ思いを、国民がこの制度に抱けるかが成否のカギ。しかし、制度の存在すら十分知られておらず、まだ道半ばといえそうだ。(北村理)

(2008/10/03)