産経新聞社

ゆうゆうLife

編集部から お年寄りは揚げ物が好き?

 ぎっしり並んだロースカツに魚のフライ、野菜の天ぷら。全部、お年寄りが食べるのか。独居高齢者の支援策の取材で宮城県丸森町・大張地区を回る移動販売車を見て、疑問を抱いた。

 大張地区は山間の高齢化した村だが、農家はおいしい物を手間をかけて生産する。今では珍しい天日干しで、棚田米はうまみを増す。ある農家の70歳のお嫁さんは朝5時半から豆を引き、かまどで炊いて、豆腐を作る。地区唯一の日用品店「なんでもや」の人気商品だ。そんな地区を回るのに、佐久間憲治店長(67)は、街で仕入れた揚げ物を移動販売者に積み込んだ。

 驚いたことに、揚げ物は早々に売り切れ。どの家も2000円以上買う。理由の一つに嫁不足がある。独身の息子が勤めに出る間、高齢の母親が日中独居となる農家が少なくない。油を使う調理に不安がある。

 売れ行きが良いのは、自分たちの店を維持しようという意識もあるだろう。何しろ、「なんでもや」は商工会支部を中心に、住民が出資して開いた店だ。佐久間店長も、飲食店経営の経験を総菜の仕入れや弁当作りに生かす。

 高齢者の生活支援として注目されるのが、こうした「地域の助け合い」。軌道に乗った事例では、必ず核となる組織がある。それが店だったり、NPOだったり、取り組み方は千差万別。人でも組織でも、地域に根ざした財産を見つけるところから始まる。(寺田理恵)

(2008/10/24)