産経新聞社

ゆうゆうLife

編集部から 健康な人ばかりの保険なんて…

 「血圧が高いから、会社の健康保険には入れません」

 アルバイトの男性は勤務先でそう言われたのだという。思わず「それは違法だよ!」と、声を荒らげてしまった。事業主が「どうせ、分かりゃしない」と、出まかせを言ったのかと思ったら、余計に腹が立った。

 しかし、企業は本当に医療費のかかる人もためらいなく健保に入れたり、入社させたりしているのだろうか。疑念を抱いたのは、肝移植を受けた女性にインタビューしたとき、彼女が「こんなに医療費がかかるのに、採用してもらえるのか不安でした」と言っていたのを思いだしたからだ。

 新規採用の際には健康診断がある。本来は雇用後の適正配置と健康管理のためで、採用の可否を決めるためではない。しかし、不採用でも、理由は説明されないから、医療費負担を避けるためでも藪(やぶ)の中だ。

 事業主の社会保険料負担は、個人の負担同様に増えている。しかも、この春には新しい健診も導入された。社員のメタボリックシンドロームが改善されない企業では、健保の拠出金が増える。健康でない人が多ければ、事業主負担も重くなる。

 「不健康だと、健保に入れない」がまかり通る時代にならないのか−。「健康な人ばかりの保険なんて、皆保険じゃないよ。保険の胴元の丸もうけじゃないか」と、一笑に付しつつ、つい背筋が寒くなったのだった。(佐藤好美)

(2008/10/31)