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年金 年金質問箱 特別便を受け取って(下)


 ■訂正された記録 反映されるのはいつ?

 「『ねんきん特別便』に漏れがあり、記録が見つかったのですが、その後、音さたがありません。年金額は本当に増えるのでしょうか」。そんな問い合わせが編集部に相次いでいます。記録訂正による増額分は、いつ、どのような手続きをへて支給されるのでしょうか。何カ月も待たされる現状に、高齢受給者からは「生きている間にもらえるのだろうか」との声が上がります。(篠原那美)

 神戸市の寺西俊之さん(76)=仮名=は社会保険事務所で調べてもらった結果、42カ月分の厚生年金記録が見つかったという。特別便が手元に届いたのは今年の2月のことだった。それから9カ月。「訂正された年金の増額分は、一体いつ支給されるのだろう」。見通しが立たず、不安を感じているという。

 記録の確認作業にも、膨大な時間がかかった。

 特別便には、若いころに勤めていた2社の記録が漏れていた。最初に社会保険事務所に足を運んだのは3月3日。漏れていた2社の社名を伝えると、幸いその場で記録は見つかり、寺西さんは安心して事務所を後にした。

 ところが、待てど暮らせど、その後の連絡が一切なかった。6月4日、再び事務所を訪ねたところ、見つかった2社の記録が載った「被保険者記録照会回答票」を渡された。

 「この42カ月分は、いつから支給されるのですか」。寺西さんは社会保険事務所の窓口で尋ねたが「手続きがこんでおり、いつ支払いがスタートするのか分かりません」の一点張り。

 9月には「ねんきん特別便専用ダイヤル」にも問い合わせたが、明確な回答は得られなかった。

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 10月7日。ようやく社会保険事務所から連絡があり、記録訂正後の年金見込額の試算を知らされた。これまでの年金に比べ、年額約30万円増えるという。それだけではない。現在76歳の寺西さんの場合、60歳から年金を受けているので、もらいそびれた過去16年分の年金がまとめて支給される。

 「年金時効特例法」が昨年7月に施行。年金を請求し忘れたなどのケースは時効で過去5年分しか支給されないが、この法律により、記録が訂正された場合は5年以上前の時効消滅分も支給されることになったのだ。

 物価の変動を考慮しなければ、寺西さんが過去5年分として受け取るのは、約150万円。残り11年分は約330万円。計約480万円が支給される計算になる。

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 しかし、支給開始までには、まだ時間がかかりそうだ。社保庁では、新年金証書の送付自体、「年金記録訂正の処理が開始されてから、4〜5カ月超の時間がかかる」としている。過去5年分の一時金支給は、そこからおおむね1〜2カ月後、5年以上前の年金は、さらに3〜6カ月後になる。

 寺西さんの年金振込額が増えるのは、早くても来年4月ごろになりそうだ。寺西さんは「後期高齢者と呼ばれる年代で、悠長に待っている余裕はないのだが…」と話している。

(2008/11/19)