産経新聞社

ゆうゆうLife

編集部から あきらめちゃダメ

 「どうせ見つからない…。そんなふうに最初からあきらちゃダメ」。「ねんきん特別便」の取材で出会った神奈川県相模原市の男性(71)は、そう話していた。

 自分の過去の経歴を紙に書き出し、履歴書を作ったというその男性。取材では、仕事に就いたばかりの少年時代のことを、懐かしそうに語ってくれた。

 中学卒業後、福島県の郷里を離れ、横浜市内の米穀店に住み込みで働き始めた。「当時は仕事も覚え始めで、社員というより、見習いのようなもの。まさか、厚生年金をかけてもらっていたなんて、思いもしなかったけど、もしかしたら…と、電話で問い合わせてみたんです」

 受話器を握るまで、いろんな思いが巡ったはずだ。50年以上前のこと。当時の経営者は元気だろうか、自分のことを覚えている人はいるのだろうか…。私が同じ立場なら、迷った末に、何もしないまま受話器を置いていたかもしれない。

 でも、ちょっとの勇気が道を開くことがある。男性の場合、米穀店に問い合わせたことで、年金を管理する組合の連絡先が分かり、組合の記録から、当時の年金番号が判明。20カ月分の厚生年金記録が見つかった。

 社保庁のずさんな管理から始まった“年金騒動”。でも、年金は法律上、自分から請求しなければもらえないものでもある。特別便は、自分の年金を確認し直す、いいチャンスなのかもしれない。(篠原那美)

(2008/11/21)